第1回定例会 意見 2023・03・02 高岡じゅん子

令和5年3月 定例会-03月02日

高岡じゅん子 議員 生活者ネットワーク世田谷区議団を代表し、議案第九号「令和四年度世田谷区介護保険事業会計補正予算(第二次)」及び議案第十三号「世田谷区個人情報保護条例」の二件に関し、賛成の立場から意見を申し述べます。

まず、介護保険事業会計に関してです。

今回の補正は、介護認定審査会の事務費が少なかったことや介護保険サービスの利用が予算の見込みより下回ったことなどから減額補正となっています。そもそも各基礎自治体が保険者となって運営する介護保険事業は、三年ごとの実態調査に基づくサービスの需要予測を予算に反映させ、必要な財源を確保する仕組みで回っています。今回の補正は、当初予算に対し一%以下の額であり、世田谷区介護保険事業会計は的確な運営がなされていることから、本議案には賛成いたします。

一方、介護保険制度が始まって二十年を超え、この制度自体の制度疲労とでも言うべきものが今明らかになっているのではと私たちは感じています。昨年の決算特別委員会でも指摘しましたが、予測に基づく予算に対し、利用が下回り、減額補正や介護給付費準備基金への積み増しになることは、財政の安定にはよいことかもしれませんが、介護サービスがどこか利用者にとって使いづらいものになっていることがここに表れているのではないでしょうか。例えば、人材不足のため、利用したくても利用者の希望がかなわないことがあるという区民の声が私にも届いています。行きたい曜日にデイサービスに行きたくても、満員で違う曜日にするとか、リハビリの追加をお願いすると人手不足で回数を増やせない、ヘルパーさんの回数を増やすようにお願いしても、人材不足で無理だったり、日程変更に対応できる人数がいなかったり、そういうことがあるということです。

世田谷区の介護保険料基準額は、都内四十九自治体の中で十七番目に高く、二十年前の介護保険開始時点の二千九百六十七円から比べると、二・一倍の六千百八十円になっています。今後も高齢者人口の増加に伴うサービス需要の増加が見込まれ、介護給付費準備基金の活用を加味しても、世田谷区の次期介護保険料は値上げが避けられない見通しです。

さらに、国の審議会における介護保険制度の見直しに関する昨年末の意見を見ますと、応能負担、利用時の負担が二倍になる現役並み所得の基準見直しということがいまだに言及されています。利用者の負担割合が増えることは利用控えの増加につながり、介護保険がつくられた元来の意義である介護の社会化、誰もが安心して高齢期を過ごせる社会づくりとはかけ離れていってはいないでしょうか。

また、今後の課題としてより深刻なのは、介護現場のケアワーカーの疲弊と高齢化、人手不足です。世田谷区は若年層に介護の仕事の魅力を知ってもらうために様々な取組を行っていますが、介護従事者の平均給与は全産業の平均に比べ七万円も低いと報道されています。イメージだけをよくしても、介護現場で働く方々にその専門性にふさわしい報酬が渡せなくては、ケアワーカーの不足は解消できません。この背景には、ケアを家庭内の無償の仕事とし、誰でもできる簡単な女の仕事と捉える家父長主義的なジェンダーバイアスが根強く残っていることがあり、その解消が必要です。国の制度である介護保険制度とその報酬体系の抜本的改正が必要であり、現場を知る世田谷区から国に対しても積極的に意見を上げていくことを求めます。

世田谷区では、二月八日に、九期世田谷区高齢者福祉保健計画・介護保険事業計画策定に向け、地域保健福祉審議会高齢者福祉・介護保険部会第一回を開催し、令和六年度から三年間の計画づくりを本格的に開始しています。国の制度に合わせて区民の福祉政策を決めるのではなく、区民の生活実態、区民のニーズにこそ根差した介護保険事業の推進を要望し、第九号議案に対する意見といたします。

次に、議案第十三号「世田谷区個人情報保護条例」の全面改定に関して、賛成の立場から意見を申し述べます。

世田谷区は、昭和五十一年に、二十三区で初めて電算機運営条例を制定したときから一貫して、区民のプライバシーを守るため、絶対収集禁止事項や不必要な情報の不登録、目的外利用の禁止などを定め、また、自分についての記録内容の開示、修正の申出などの仕組みづくり、電算システムの公正な運用を保障するための審議会の設置などの施策を実施してきました。今回の条例改定に向けては、今まで世田谷区が区民と共に培っていた人権としての個人情報保護を大切にする仕組みと姿勢をあくまで維持し、区審議会の機能をできる限り保持することを私たちは求めてまいりました。今回の条例は一定の成果があると感じています。

また、DV被害者保護や性的マイノリティー、外国にルーツのある区民などセンシティブな個人情報に関して特段の配慮が必要ではないかという議論もあり、今回の条例に世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例に基づく条例要配慮個人情報が書き入れられたことを評価します。 基礎自治体の中には、国の個人情報保護法に対する施行条例という形で最低限の規定整備を行っている例も多くあります。議案第十三号の条例は、世田谷区の実践を生かした世田谷区らしい条例です。今後はこの条例を適切に運用し、区政の多岐にわたる個人情報を取り扱う現場の隅々まで条例の趣旨や規定を行き渡らせ、書かれていることに実効性を持たせていく日々の業務の積み重ねが求められます。区長から窓口に至るまで、さらなる個人情報保護への真摯な取組を求め、賛成意見といたします。