令和5年3月 定例会-03月28日
田中みち子 議員 生活者ネットワーク世田谷区議団を代表し、令和五年度一般会計予算ほか四件全てに賛成の立場から意見を申し上げます。
私たちは四十年以上前から、生活に密着した様々な課題や環境問題を解決するために、区議会に議員を送り続けてきました。二期あるいは三期で交代するというこれまでのルールは、議員を職業化、特権化せず、いまだ子育て、介護の多くを担う女性にとって議会に挑戦するハードルを下げることにも寄与し、普通の主婦や若い女性が政治を道具として活用する仕組みをつくり出し、多くの女性の政治への参画の裾野を広げてきました。
私は、生活者ネットワークと出会う前は、乳児院のボランティアや、コンゴ民主共和国での紛争鉱物による性的テロ問題を考える会を主催するなど、一貫して魂の殺人と言われる性暴力の根絶と、困難を抱える女性や子どものエンパワーメントに向けて取り組んできました。
議員になった八年間でも包括的性教育やセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツの推進を何度も取り上げ、世田谷区の多様性を認め合い、男女共同参画と多文化推進条例にSRHRの視点が入ったこと、平和資料館と男女共同参画センターらぷらすとの連携による初めての紛争下における女性の性暴力の啓発事業が行われたこと、学校現場における性教育を進めるためのリプロの専門部会が立ち上がり、着実に進める体制ができたことなど、希望を持ちました。
私は、今議会で議員としての生活に終止符を打ち、帰省するたびに体も心もどんどん小さくなるひとり暮らしの田舎の母をエンパワーメントするために実家に帰る決断をしました。今日の意見が最後の意見となります。
今期を振り返れば、二〇二〇年には新型コロナウイルス感染拡大により、家庭内DVや面前DVが顕在化し、区内で受けるDV相談も約一・六倍になりました。国連事務総長やUNWomen事務局長が女性や子どもへの暴力が急増しているとして、国際社会に対し、ジェンダーに基づく暴力という影のパンデミックに明確に終止符を打つべく努めるよう要請が相次ぎ、世界中で起こるDVが浮き彫りになりました。
また、一斉休校により子育てが実質的に家の中に閉じ込められる事態となったことで、ワンオペで頼る先のない育児中の女性やシングルマザーからは、子育てに必要な時間を生み出すために非正規雇用を選ばざるを得なかったなど働き方への不満や、実家が遠く近隣に頼る人もなく、もう限界といった御相談など、子育ては自己責任の名の下に、これまで行政や地域資源ともつながってこなかった多くの女性や子どもの困難さを痛感しています。
こうした問題は、夫である男性中心の経済の在り方、社会のジェンダー観が基本であることはもう既に知られていることです。とはいえ、日本政府は男性育児休業取得率の目標を二〇二五年で三〇%と掲げていますが、直近の取得率は半分の約一四%程度にとどまります。少子化対策を進める上で必要な育児中の女性の支援は、地域と密着した地方自治体の重要な課題です。
私たちは、いまだ家事や育児、介護といったアンペイドワークを担う女性たちの当事者として、また、毎月十一日には花を持ってフラワーデモを行い、戦争反対や女性へのあらゆる暴力を根絶するために、#MeToo運動とも連帯し、誰も一人にしないと声を上げ続けるとともに、私のような普通の主婦が議会に出てくることで議会を身近に感じてもらい、必要となる生活者の視点で政策を提案してきました。
特に生活に根差した課題を調査、追及していくこと、そこには必ずジェンダーの課題が隠れています。なぜなら、日本では生活を担うのは女性であり、男性は経済、社会を担うという性別と役割が固定化してきたからです。ジェンダーによる差別は、多くの問題を提起してきました。性自認や同性婚、セクシャルハラスメントなどはジェンダーによって明らかになった直接的な差別です。
また、世の中にはもっと多くの差別が根源的に見られることに意識を向けるきっかけとなったのは、障害者や外国人への差別など、ジェンダーから見えてきた多様性の尊重と無意識の偏見があります。つまり、意識しないで差別したり、差別と気づくことのない多くの人によって差別されてきた歴史を改めて感じています。
また、女性活躍が主要政策にもかかわらず、女性活躍後進国から抜け出せない日本では、東京医科歯科大学など大学入試に性差別があることが判明したり、女性のいる会議は時間が長くなるという元首相の発言など、頑張ったら女性も活躍できる社会でないことが露呈した事件でした。私も身近な方々から、議員であることにより様々な御相談や御意見をいただく中で、多くの相談がジェンダー問題につながっていると自分自身が気づかされることが何度もありました。
昨年、女性が日常生活、または社会生活を営むに当たり、女性であることにより様々な困難に直面することが多いことが社会的に認知され、法律という形になったことは喜ばしく、ここに光を当てるためにもさきの一般質問や予算特別委員会でも女性支援新法のよりよい運用に向けて取り上げ、様々に提案しました。
二月一日現在、九十一万五千人の人口を抱える基礎自治体である世田谷区としては、検討に要する時間などありません。早期に庁内連携を主導する旗振り役を明確にして、女性支援の計画策定と、民間団体と協働して新たな女性支援の枠組みづくりのために会議体を設置し、多岐にわたる属性や背景を持つ女性たちが支援からこぼれることがないよう包括的に支援し、真の女性のエンパワーメントにつながる体制整備を、ここ世田谷から着実に進めることに期待します。
SDGsのゴール、五、ジェンダー平等は二〇三〇年までに達成すべき目標であり、ジェンダー問題は命と人権に関わります。今、世界中が取り組んでいるSDGsの十七の目標全ての課題解決にはジェンダー平等が不可欠です。区としても次期基本計画全体を貫く考え方として、この普遍的な目標を基本計画に反映し、ジェンダー主流化を着実に進めること、首長と行政が常に人権尊重のアピールを欠かさないこと、区議会が真のジェンダー平等に根差した政策に取り組んでいくことを切に願っています。
最後に、三十一日をもって退職される職員の皆様、長きにわたり区政に尽力くださいました。心より感謝申し上げます。そして、この場にいらっしゃる全ての皆様の健康と、ますますの御活躍を祈念申し上げまして、以上で終わります。