第3回定例会  一般質問と答弁 2022.09.21 金井えり子

令和4年9月 定例会-09月21日

金井えり子 議員 では、質問を始めます。

世田谷区は、気候非常事態宣言を行っています。今回の台風十四号も全国で猛威を振るい、まさに気候危機を実感しました。二〇一九年の多摩川の水害を教訓に、強力な台風や集中豪雨などの自然災害から区民を守る対策として、砧、玉川地域の避難行動要支援者行動シートの配布や、個別避難計画が進められています。

この地域から始まり、世田谷区全域にその他の災害対策の個別避難計画も広げていくとのことですが、のんびりしている暇はありません。どのようなときに、どうやって、どこに避難するのか、緊急連絡先、支援者、御近所の情報など、あらかじめ確認しておくことは本当に重要です。

砧、玉川地域の避難行動要支援者の個別避難計画の進捗状況と、ほかの地域の個別避難計画の進捗、今後について伺います。

避難行動要支援者のうち、ケアマネジャーなどの支援者と頻繁に会うことができる高齢者にはアプローチしやすいと思いますが、障害のある方からは、情報が不足しているので不安という御相談がありました。まずは当事者御自身の防災意識を高めること、そして、それぞれの障害の特性に合わせた個別避難計画の作成です。

避難所への避難はもちろんのこと、在宅避難にしても、長期間になり備蓄がなくなったら、物資の調達は誰がどのようにしてくれるのか、電源の確保はできるのか、タイムリーに情報は入ってくるのか、また、支援者の確保など備えておくことが必要です。

北沢地域で、個別避難計画をつくるために、地域の支援者や、あんしんすこやかセンター、社会福祉協議会と一緒に実地訓練をした方にお話を伺いました。具体的なことを計画に書き込んでいくと、紙が何枚にもなったそうです。一緒にやってみることで、地域の方々もそれぞれの気づきがあり、参加したみんなにとって有意義な訓練になります。

個別避難計画を紙面上だけの情報にとどまらせず、地域の人や支援者とのつながりをもって実際に使えるものにすべきです。見解を伺います。

この個別避難計画で、福祉避難所までを描けると安心です。二次避難所である福祉避難所の受入れ体制は万全なのか、また、二段階ではなく、直接福祉避難所へ行きたいという声は多くあります。国の改正で直接の避難ができるということになりましたが、世田谷区ではどのようにお考えでしょうか、今後についても伺います。

次に、人と動物との調和の取れた共生推進について伺ってまいります。

ペットは家族の一員、それ以上の存在である場合もあります。コロナ禍で、さらにペットを飼う人が増えました。世田谷区でも、人と動物の共生推進プラン改正の素案が示されています。中でも高齢者とペットについての対策は急務です。

ペットが高齢化すると面倒を見切れない、自分にもしものことがあったらペットはどうなるのか心配、誰か預かってほしい、いや、ペットは生きがいだから離れたくない。飼い主の思いも様々です。こうした課題に対応するためには、相談できる場や頼れる相手が必要です。

横須賀市にある特別養護老人ホーム、さくらの里山科では、ペットとともに入居ができ、また自分のペットがいなくても、施設の犬や猫と触れ合えるようになっています。その方の思いを大切にした対応がなされています。

福岡県古賀市では、昨年からペットと暮らすシニアの備えサポート事業が環境課と福祉課で始まりました。シニアとペットの安心した暮らしのためのチェックリストというものに、飼い主がペットのかかりつけ医や緊急時の預け先、万が一のときのことなど、あらかじめ記入し、ケアマネジャーと確認をしておきます。市には登録したボランティア団体があり、ペットに関するサポートが必要な高齢者への訪問なども行います。民間事業者のサービスの情報も提供されます。

このような工夫があれば、飼い主の選択肢も増え、ペットと引き離すばかりではなくなります。御本人の思いが尊重されることは、その後の生きる希望へもつながります。

高齢であっても、御本人が飼い主として責任を持ってペットの行く末までを選べること、その思いに寄り添える共生推進プランになることが求められます。見解を伺います。

ペットがこうして地域で暮らしていくためには、周囲の理解が必須です。犬仲間でコミュニティーができたり、猫を飼っているという共通点だけで話題が広がったり、その関係性はとてもよいのですが、反面、動物が苦手な方や考え方が違う方とのトラブルは、とても心配です。双方が我慢するのではなく、共生できるように、区はどのように進めていくのか伺います。

そして、次に子どもの権利について伺います。

今年六月に、子どもの権利条約に対応する国内法として、こども基本法が成立しました。世田谷区は、二〇〇一年に制定された世田谷区子ども条例で子どもの権利の尊重を定め、その後、子どもの人権擁護機関、せたホッとを設置しています。

しかし、二十年以上たっても、区内において条例の周知は足りず、大人には子どもの権利に関しての理解がされていません。そして子ども自身は、その権利を自分に引き寄せて考えることができていません。改めて、子どもの権利を保障する条例の視点から、幾つか質問いたします。

せたホッとのチラシなど、学校で配布している様々なお知らせは、学校は配るだけ、あとは福祉、こっちは環境などと、区の事情の縦割りでばらばらに動いています。教材として有効活用すればいい、ただ配るだけではもったいないという声も聞きます。子どもに関わること、本当に多岐にわたります。子どもの最善の利益を思えば、区として一貫性を持って取り組むべきではないでしょうか。

いま一度子ども条例を周知し、子どもの権利について理解を広げることが求められます。地域全体で子どもを見守っていくために、区は全庁を挙げて取り組むべきと考えます。区長の見解をお聞かせください。

世田谷区では、今年五月にヤングケアラー調査が行われました。有効回収率は小学生、二八・五%、中学生、二二・三%、高校生、一二・八%、詳細な分析はこれからとされています。

このアンケートを学校で配布することで、先生方にもヤングケアラーという問題を認識していただき、子どもたち自身の気づきにもつながると期待しておりました。しかし、小中学校では説明もなく配られたそうです。重要な調査なら、子どもに一言説明すべきではなかったでしょうか。

この調査は子どもを支援につなぐ大事なものです。ヤングケアラーの問題は、子どもの成長に影響を及ぼす大きな問題です。子どもには当たり前に学習したり遊んだりする権利があります。先生方の理解と配慮が必要です。改めてヤングケアラーをはじめとする子どもの権利について、どのような認識でいらっしゃるのか、教育委員会の見解を伺います。

世田谷区子ども条例では、子どもの意見表明権が保障されています。子どもの意見を聞くことはとても大切、そのためには学校と福祉の連携が重要です。意見表明できる環境、安心できる場、信頼できる人、子どもの思いを聞き、つなぐ人の存在が必要です。スクールソーシャルワーカーも少ないのですが、そもそも子ども分野のソーシャルワーカーの数がとても少ないと聞きます。

二〇二四年から子ども家庭福祉ソーシャルワーカーが民間資格となりますが、それを待っているだけでは、今困っている子どもを救えません。地域行政制度の中に四者連携として児童館が入ることで、子どもたちの課題をより察知しやすくなることを期待します。

ヤングケアラーなどの子どもの権利に関する問題には、学校とも新BOP、プレーパークなどとも連携を深め、専門家だけでなく、地域の大人が子どもの権利をベースに子どもを見守り、子どもが安心して意見表明ができる環境を増やすことです。見解を伺います。

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

〔保坂区長登壇〕

◎保坂 区長 金井議員にお答えをいたします。

子どもの権利条約自身を子どもがまだ知らない現実について、区の取組を御質問いただきました。

まず、議員の御質問にもあったように、ようやく、こども家庭庁の発足とともに、こども基本法という法律ができたと。ここには子どもの権利条約に即した子どもの権利というものをようやくうたわれるようになりました。

一九九〇年代に日本が子どもの権利条約、児童の権利条約を批准して以来、私自身はジャーナリストとしてメディアで、あるいはその後は国会でも、国内法を整備しろということを申し上げてきましたが、当初、今から十五年前、十七、八年前は、この子どもの権利条約というのは途上国の、いわば貧困や生存の危機に見舞われている子どもを救済する条約であって、日本の子どもには何の関係もないのだと、こういう誤った答弁が政府からされていたことを思い出します。

ウィーンで開かれている子どもの権利条約締結国会議では、度々そうではないのだ、日本の子ども自身の人権や権利保障、これがその条約の趣旨なんですよということで、国内法整備を度々求めていたことを考えると、大きな、いい曲がり角、ターニングポイントを迎えているなと思います。

二十三区で初めての子ども条例を施行してから二十年になります。この条例の下で、この条例に加える形で、子どもの人権擁護機関、せたホッとをつくりまして、まさに子どもの権利保障、子ども第一の原則にのっとって、いじめの悪化の未然防止や、あるいはSOSを発する子どもたちの声を聞き取りながら、大人として、あるいは学校と第三者機関であるせたホッとが協力して、幾多のプロジェクトを子どものために展開してきたことは、世田谷区の財産であるというふうに思います。

今年度、子ども・子育て会議に子どもの権利部会を設置しまして、来年四月のこども基本法の施行も見据えながら、地域づくりを含めた子どもの権利の普及啓発等、今後の政策展開に向けた議論を重ねているところであります。

また、この議論は、子ども、若者自身が参加して初めて意味があるものでありまして、シンポジウムやワークショップに子ども、若者自身が参加をし、地域の大人とともに、このテーマについて議論を深めていく、そういうチャンスを広げてまいりたいと思います。

子どもが権利の主体として、その成長発達に応じた意見表明ができて、そして自らの尊厳を守りながら、いじめや暴力、様々な差別から脅かされることなく健やかに伸びていける地域社会をつくっていきたいと思います。

◎保健福祉政策部長 私からは、個別避難計画関連二点、御答弁いたします。

区では、令和元年台風十九号の経験も踏まえ、地域防災計画の改定を受け、令和四年四月に避難行動要支援者避難支援プランを改定し、プランに基づき個別避難計画の作成を順次行っています。

令和四年度については、多摩川の洪水浸水想定区域内に居住している避難行動要支援者の約五百人の方について、玉川、砧の総合支所より個別避難計画の調査票を送付しました。返信は約五割となっており、現在はまだ返信がない方や、重要な項目が未記入の方などへの再調査に取り組んでおります。

令和五年度以降については、今年度に個別避難計画を作成した方の情報の更新はもちろんのこと、震災や中小河川の洪水なども含め、区内全域での避難行動要支援者の個別避難計画の作成ができるよう準備をしているところです。

次に、計画を実際に使えるものへについての御質問についてです。

令和四年度の玉川、砧の総合支所では、個別避難計画の作成に当たり、新たな避難支援に係る協定や避難場所の確保などを行い、対象者の方には、各地域の避難場所等が掲載されたリーフレットの同封、福祉サービス提供事業者には、対象者と同じ防災情報の共有や、作成に当たっての協力を依頼することで、個別避難計画の補強をしているところです。

今後、区内全域に個別避難計画の作成を着実に広げるためには、地域地区のハザードの状況に合わせた意識啓発や、福祉サービス提供事業者への協力の依頼を継続的に行う必要があります。

また、地域で既に実施されている勉強会や連絡会などと、総合支所をはじめ関係機関が連携協力することも重要だと考えています。

地域地区の実態に見合った個別避難計画を作成し、当事者の方が着実に避難行動を取れるよう努めてまいります。

私からは以上です。

◎障害福祉部長 私からは、福祉避難所の現状、直接避難について御答弁申し上げます。

災害時に自宅や指定避難所等での生活が難しい障害者の方を一時的に受け入れる福祉避難所におきましては、区内には区立、民立の障害福祉施設、それから都立の特別支援学校の合計四十二施設と施設の提供、それから被災住民の受入れに関する協定の締結を行っております。

各施設では、定期的な避難訓練のほか、福祉避難所として住民を受け入れるための訓練などを重ねて、災害時に備えている状況です。

直接避難につきましては、令和三年の五月に災害対策基本法の一部が改正されまして、福祉避難所の確保・運営ガイドラインにも、自宅から直接避難が規定されましたが、受入れの人数や必要な人員、物資の確保など課題がございます。

今後、福祉避難所への直接避難ができるだけ早い時期に可能となるよう、他自治体の検討状況などの情報を収集しながら、課題の解決に向けて関係所管と連携して検討を進めてまいります。

以上です。

◎世田谷保健所長 私からは、ペットに関連して二点お答え申し上げます。

少子高齢化や核家族化が進み、動物が家族の一員として絆を深め、心の癒やしを与えてくれるなど、大切な存在となっています。議員からお話ございました他自治体におけるペットと暮らす特別養護老人ホームにつきましては、入居者がペットと引き続き暮らすことができる点や、アニマルセラピーによる癒やしの効果など、メリットがあると認識をしてございます。

一方、ペットが苦手な入居者との関係や、施設管理や衛生面を維持する人材確保などの課題もあり、こうした施設が必ずしも進んでいないものと認識しております。

区は、終生飼養の備えなど、飼い主がペットを責任を持って飼育することの重要性を周知徹底していくことが基本であると考えています。特に高齢者の飼い主には、万一入院等が必要になった際の一時的なペットの預け先や緊急連絡先の確保など事前の準備や心構えを、機会を捉えて促してまいります。

その上で、緊急の入院等によりペットの預け先が見つからない場合などは、都や福祉関係部署と連携し、適切に対応してまいります。

次に、ペットとの共生に関する地域の理解の点でございます。

人と動物との調和の取れた共生社会を実現するには、飼い主が飼っているペットが地域社会に受け入れられていると認識すること、動物を飼ったことがない人や苦手な方を含め、命ある動物に対する理解を深めて、動物が人の生活環境内に存在しているという認識を持つことが重要と考えております。

現在改定中の人と動物との調和のとれた共生推進プランにおいても、区民、関係団体、行政が相互に連携して調和の取れた共生社会を推進し、健康で豊かな生活環境を形成することを目指しています。

ペットが、家族の一員としてはもとより、地域の一員として受け入れられるためには、飼い主が飼育マナーや周辺環境への配慮等、秩序を守り、終生飼養や経済的負担に備え、責任を持って飼育することが重要です。

区は、住宅地が主体であるという地域特性を踏まえ、ペットの飼い方や飼い主の責務の重要性について飼い主にしっかりと伝えるとともに、区民の理解促進に努めてまいります。

私からは以上です。

◎教育政策部長 私からは、ヤングケアラーをはじめとする子どもの権利についてお答えいたします。

本年五月に学校において実施いたしましたヤングケアラー調査は、子どもが適切な養育を受け、健やかな成長と教育の機会を得られるようにするとともに、子どもが介護、世話をしている家族等を必要な支援につなげるための施策立案に必要な基礎資料を得ること、また、本調査を通じて、子どもたちに子どもの権利やヤングケアラーに関する啓発を行い、気づきを促すことなどを目的としたものです。

教育委員会といたしましては、ヤングケアラーについて、子ども自身が自分の置かれている状況を説明することが難しいこともあり、教職員が日頃から児童生徒のささいな変化などにも気を配りながら、変化の兆候を捉えた場合は、教職員間で情報共有して組織的に対応するとともに、区長部局や外部機関と連携を図りながら適切に対応することが重要であると考えております。

引き続き学校が、子どもの権利が尊重され、自身の持つ能力を最大限発揮できる学び場となり、全ての子どもが安心して学習したり遊んだりする中で育つことに喜びを感じることができるよう努めてまいります。

以上でございます。

◎子ども・若者部長 私からは、ヤングケアラーなどの子どもの権利に関する問題について、子どもを見守り、安心して意見表明ができる環境を増やすべきとの御質問に御答弁申し上げます。

ヤングケアラーが抱える問題は、家庭の中のことのため、本人が誰にも相談しづらかったり、困難を抱えていても、本人に自覚がない場合も多いため、周りの大人が子どもの変化を敏感に感じ取り、丁寧に子どもの声に耳を傾けるなど、本人の意思を確認しながら、見守りや必要な支援につなぐことが重要だと考えてございます。

学校や新BOP、児童館、青少年交流センターなど、地域も含めた子どもに関わる大人が、ヤングケアラーをはじめとする子どもの権利についての理解を深め、日頃より子どもとの信頼関係の構築に努めることにより、子どもが気軽に相談でき、思いを酌み取れる環境が整えられるよう、機会を捉えて研修などを行ってまいります。

以上でございます。

金井えり子 議員 御答弁いただきました。子どもの権利についてなんですが、国連から何度も勧告を受けてきながら、やっと国が動き出したというところかと思います。今、改めて世田谷区でもこの子どもの権利の周知を広げていくチャンスかなと思っています。先ほど区長がおっしゃっていた子どもの参加というところで、川崎市などは子ども会議がありますし、本当に子どもの意見をたくさん入れていただいて、世田谷区の財産である子ども条例、せたホッとなどを使って、ぜひぜひ子どもたちを守っていっていただきたいと思います。十一月にシンポジウムもあるということで、大変期待しておりますので、よろしくお願いいたします。

以上で質問を終わります。(拍手)