令和5年9月 定例会 09月22日
おはようございます。通告に基づき質問をします。
現在、令和六年度から三年間、障害施策を進めるための(仮称)せたがやインクルージョンプランの策定が進められています。障害がある人が地域で暮らしながら学び働くなど社会参加するためには、当事者が環境に適応するだけではなく、地域とそこに暮らす人も共生に向けて変わっていく相互適応が必要です。
本計画は、基本理念、行動コンセプト、視点に続いて、大中項目の施策体系の下、百七十七の具体的な施策が定められています。行動コンセプトとして、当事者の選択を支えるを掲げたことは、通常、人が生きる上で当たり前に行っている選択する自由を守るものであり、評価いたします。一方、選択する自由を尊重したことで、必ずしも本人が望む結果が生み出されるとは限りません。そのようなとき、専門家の役割分担による線引きや、地域のよかれと思っての行動などにより、当事者の選択が自己責任にすり替えられないようにするために、行動コンセプトを包括する人権擁護のビジョンが必要と考えます。
例えばリスクコミュニケーションによる相互の信頼の構築は、結果よりも経過が当事者、家族、支援者の利益になります。加えて、ジェンダーのビジョンを入れると、同性介護、介助の推奨や障害者の結婚、出産に支援の手が届きやすくなります。障害者を家族に持つヤングケアラーの防止にも目を向けることができるでしょう。
障害者が本当の意味で地域で自立するためには、(仮称)せたがやインクルージョンプランの行動コンセプトに包括的で基本的なビジョンを設定しなければ、施策を進める上で指針の役割を果たし切れないと考えます。区の見解を伺います。
次に、高次脳機能障害を負った人のための相談支援体制についてお聞きします。
脳の働きは、手足を動かす低いレベルの機能と、言語や記憶をつかさどる高いレベルの機能に分けられます。脳の高いレベルの機能を持つ箇所が、後天的に疾病や事故で損傷して、言語、記憶、認識などに支障が起こるのが高次脳機能障害であり、誰もがなり得る障害です。高次脳機能の障害は外見から分からないこともあり、ほかの障害に比べ研究の歴史が浅く、市民の認知も、支援制度も成熟していません。
梅ヶ丘拠点にある保健センターが実施する障害者相談は、令和三年から高次脳機能障害専属の相談員が二人配置されています。しかし、障害者総合支援法における一般相談支援の枠組みであり、介護保険でいうところのケアプランに当たるサービス等利用計画をつくる特定相談支援の機能はありません。計画を作成しないということは、障害当事者へサービスの実施状況や生活全般のニーズへの変化を聞き取る定期的なモニタリングと、計画の見直しを行わないということです。
高次脳機能障害の特徴は、リハビリにより、時間の経過とともに機能が回復、補われていくことです。また、健康だった人がある日突然障害を負うため、将来への不安に押し潰されそうな本人と家族が障害を受け入れられるようにすることも必要です。そのため、相談員による長期的な関わりが非常に重要になってきます。
保健センターにおいて、モニタリング機能がない一般相談支援であったとしても、本人と家族に寄り添いながら、各関係施設と関わりを持ち続けることが大きな支えとなりますが、現状の保健センターでは、役割分担の名の下につないで終わりといったぶつ切りの支援となっているように見受けられます。高次脳機能障害を負った人への相談、評価、訓練という一連の支援の流れは、双方向に関わりを持ちながら、一つの支援と捉えることが本人の社会復帰を支えます。
ところが、現体制は保健センターで相談評価を行い、隣接する東京リハビリテーションセンター世田谷で訓練を行うことになっており、物理的にも分断されています。モニタリング機能を持つ特定相談事業所は、東京リハビリテーションセンター世田谷に置かれていますが、保健センターからほとんどつなげていないとも聞いています。
保健センターにおける専門相談窓口では、広く相談を受け入れ、自主的な双方向の関わりを持つことが非常に重要であり、相談機能の強化を強く求めます。区の見解をお聞きします。
次に、保育の質を高めるための保育士の処遇改善についてお聞きします。
保育園の入園は四月が一般的ですが、子どもの様子を見ながら徐々に本格的に仕事へ復帰したり、年度途中から入園を希望する家庭も少なからずいるため、在籍する園児の数が増えていく、保育時間も長くなっていく傾向にあります。つまり年度の初めと終わりで必要な保育士の数が変わります。認可保育園への処遇改善策として、パート保育士につく加算補助は四月一日時点で在園する園児数に対して算出されるため、先ほど申し上げたような理由で園児が増えたり、保育時間が延びても、子どもを預かることができない、または増やしたパート保育士の加算分を正規保育士が肩代わりするような事態が起きていると聞いています。
保護者の働き方に柔軟に対応しつつ、無理のない保育士配置ができるよう、基準日を四月一日だけにしない早急な改善を求めます。区の見解を伺います。
令和五年版男女共同参画白書によると、子どもが大きくなってから再就職をするよりも、子どもがいても仕事を継続することを選ぶ女性のほうが、二十から四十代の全ての年齢で増加傾向にあり、少子化の中でも、保育ニーズは減少しにくいことが予測されます。そのため、保育人材の確保は、保育の質の向上のために今後も続く大きな課題です。保育士の安定した生活の確保と、一人当たりが受け持つ子どもの数を今よりも減らす労働環境の整備が必要です。
子どもが好きで保育士を目指している学生から、休憩時間が取れないほど忙しいことや、賃金の低さを心配する声を聞きました。これから保育士を目指す若者が世田谷の保育園で安心して働き続けるための住宅補助制度と保育士配置基準について、国と東京都への働きかけを求め、区の見解をお聞きします。
最後に、熱中症予防、お休み処での脱ペットボトルについてです。
今年の夏も非常に厳しい暑さでした。環境省が東京都に出した熱中症警戒アラートは、二〇二一年七回、二〇二二年十回、今年は昨日までで二十六回も出ています。熱中症対策は命に関わる施策であり、世田谷各所で休憩と水分補給ができるお休み処は大きな意義があります。今年は二百七十八か所に設置され、区民に浸透してきたと言えます。
そこで、お休み処を進化させて、この異常な暑さの原因が二酸化炭素の排出にあり、削減の緊急性を訴える啓発拠点として活用することを提案します。区内各所で配布している冊子「せたがや涼風マップ」に、脱プラスチックになるマイボトルの携帯を記載するとともに、お休み処で二酸化炭素の排出削減に取り組む世田谷区気候非常事態宣言をアピールすることを求めます。さらに、今年のお休み処で配布されたペットボトル六万七千二百本について、次年度は紙パックの水やマイボトル専用給水機などに代替して削減することを求めます。ペットボトルを使うことは、製造・リサイクル過程で放出される二酸化炭素の問題だけではなく、区民の意識づけの大きな妨げになります。
第二回定例会で区長は、持続可能な環境を次世代に残していくためには、区民一人一人の協力と、区自らの率先垂範が必要不可欠であると御答弁されました。熱中症予防に加えて、未来の環境に向けた区の率先垂範を示すためにも、熱中症予防、お休み処での区民啓発と脱ペットボトルに向けた区の見解を求めます。
壇上からの質問は以上です。(拍手)
◎障害福祉部長 私からは、二点御答弁を申し上げます。
まず、せたがやインクルージョンプランについてです。
令和六年度からの(仮称)せたがやインクルージョンプランでは、計画期間中の行動コンセプトを、当事者の選択を支えると定めます。障害当事者には、障害の状況等により、自ら選択することが難しい方や、選択した結果を考えることが難しい方もいると思われ、当事者の意思決定支援や体験の機会の確保、選び直しの尊重、同性介助や性の尊重など、具体的な環境整備が大切となります。
区では、当事者や家族、支援機関などが、人権擁護を基本として選択を支える環境整備に向けて協力して取り組んでいけるよう地域の体制づくりを進めます。また、支援機関等が、当事者の自分らしい生活を支えるため、次期計画の行動コンセプトを含めた広い視野を共有できるよう、パンフレットや障害者施策推進協議会、自立支援協議会等からパブリックコメントや御意見をいただきながら検討してまいります。
続きまして、高次脳機能障害についての答弁をいたします。
高次脳機能障害では、支援の導入部分として、当事者や家族のニーズを把握し、必要とするサービスをつなぐ相談機能が重要であるというふうに認識をしております。梅ヶ丘拠点では、保健センターが専門的な相談窓口として、専門医相談など多様な相談に応じるとともに、就労に向けた職業評価コンパスなど相談と評価を実施し、東京リハビリテーションセンター世田谷が訓練を実施するという役割分担で、高次脳機能障害への支援を行ってございます。
この間、保健センター、東京リハビリテーションセンター世田谷では、保健医療福祉の拠点におけるそれぞれの機能を果たしつつ、人員体制を強化しながら、東京リハビリテーションセンター世田谷の訓練利用者が保健センターの専門医相談を利用したり、訓練利用者支援会議に保健センターが参加するなど連携の取組を進めてまいりましたが、さらなる連携が必要であるという認識の下、強化に向けての検討を行っております。
具体的には、東京リハビリテーションセンター世田谷の行う地域生活を支える支援の検討に保健センターが関与するなど、当事者との関わりを深める双方向の連携に向けた協議を進め、梅ヶ丘拠点が当事者に寄り添った支援の拠点となるよう取り組んでまいります。
私からは以上です。
◎子ども・若者部長 私からは、保育士の処遇改善について二点御答弁いたします。
初めに、パート保育士加算の算定基準についてです。
私立認可保育園の運営費につきましては、区独自の加算を行っており、保育園を十一時間開所する園に対して、パート保育士を雇用するための経費を補助しております。パート保育士加算の算定に当たりましては、年度の初日、四月一日の午前八時と午後五時三十分時点で登園している園児数を基に算出することとしています。ただし、四月一日の園児数が特に少ない事情がある場合は、四月中のほかの日を基準にできるよう運用しているところです。
御指摘のとおり、年度当初の四月は登園している園児が少ない、または登園時間が通常より短いという状況も想定され、また、以前より年度内の園児数の変化が大きくなっていることから、園によっては年度を通した雇用実態より加算額が低い算定となることも考えられます。各保育園の実情をより反映できるよう、要綱の規定や運用方法の見直しを行い、来年度からの改善に向け検討してまいります。
次に、保育士の配置基準の改善や、宿舎借り上げ支援制度の事業継続に対する区の見解についてです。
私立保育園の保育士配置基準について、区では、一歳児の配置基準を認可基準の六対一から五対一とした場合に、運営費において独自の上乗せ加算を行い、保育の質の向上に努めてまいりました。このたび、国から配置基準自体の変更はありませんでしたが、来年度から一歳児と四・五歳児の配置を増やす施設に対して加算が適用されることが提示されました。
この見直しによりまして、よりゆとりある保育を実現し、安心して子どもを預けられる環境を整備できる一方で、保育士不足が続く中、加算を満たすための保育人材の確保も課題となっております。保育士配置基準自体の改善は全国的な課題であるため、基準の見直しについて、様々な機会を捉え、国に対して要望してまいります。
また、保育士等に対する宿舎借り上げ支援事業は、先月、国における来年度の保育関係予算の概算要求の状況としまして、従来どおり、月八万二千円を上限とする保育士宿舎借り上げ支援事業の実施を含む内容が公表されたところです。区が事業を継続するためには、国や都による財政支援が欠かせないことから、保育人材の確保や処遇改善に大きく寄与する本事業が今後も継続されるよう、様々な機会を捉え、国と都に対して要望してまいります。
以上です。
◎世田谷保健所長 私からは、お休み処におきます脱ペットボトルに関してのお尋ねにお答え申し上げます。
今年度は、二百七十八か所でお休み処を開設しております。熱中症予防に取り組むのと同時に、気候危機への対応や環境への配慮に、区を挙げて取り組むことの重要性は十分に認識してございます。
議員御提案のマイボトルの推奨につきましては、小まめな水分補給の促しとしても有効であり、また、お休み処で休憩していただいた際に、気候危機への理解を深めるための啓発物を手に取る機会にすることにも考えられますことから、関係所管と連携しまして、これらの工夫に取り組んでまいります。
なお、現在お休み処では、既存の飲料水の提供設備がある施設を除いて、区が購入するペットボトルを配備し、利用者に提供しております。衛生面の確保や、感染症の拡大予防対策の継続、また、他の手法と比較して、施設運営上の負担や経費負担が少ないという点から用いているものでございます。現状ではこのような運用をしてございますが、区民の生命と安全を守る取組と、環境負荷の低減を両立できる方策を探るための不断の努力が必要であると考えており、こうした視点を持って様々な工夫について検討、研究を重ねながら、今後の熱中症対策に取り組んでまいります。
私からは以上です。
◆関口江利子 議員 ありがとうございました。保育士の人材確保については、取組が限定的だった地域限定保育士が、来年、児童福祉法の改定で全国に広がる動きがあります。導入後、様々に影響を受ける部分もあるかと思いますので、今後とも国や都の動きを注視していただきたいと思います。
また、お休み処で配布されるペットボトルの代替については、ぜひ予算をつけて取り組んでください。