第3回定例会 一般質問と答弁 2023・09・22 おのみずき

令和5年9月 定例会 09月22日

おのみずき 議員 通告に基づき、順次質問をしてまいります。

 初めに、現在策定中の区の各種行政計画におけるジェンダー主流化の徹底についてお伺いします。

 今年度は、次期世田谷区基本計画を筆頭に、来年度以降の区の政策を方向づける重要な行政計画が多数審議されています。調べたところ、現時点で素案段階にある計画は、全領域にわたり計十七あります。全てに目を通しましたが、かねてよりジェンダー主流化は重要で、しっかり取り組んでいく旨を表明している区でありながら、どの計画もジェンダーの視点に基づく政策検討がなされているとは到底思えず、大変驚いています。

 例えば、高齢者福祉についてです。現在パブコメ実施中の第九期世田谷区高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画素案を見ると、直前のニーズ調査では性別ごとの統計を取っているにもかかわらず、それが生かされた形跡が見当たりません。高齢者と一言で言っても、高齢男性と高齢女性の置かれた社会経済的状況は大きく異なります。コロナ禍を経て、高齢単身女性の貧困問題は可視化されましたが、根強い性別役割分担意識の下で、高齢女性は年を重ねても家事などのケア負担を担い続けています。

 また、先日、他会派の質問で、孤独死とジェンダーのお話がありましたが、対人関係や地域とのつながりは、女性のほうが男性に比べて強い傾向にあります。これらは、区の調査からも読み取れるファクトです。なぜこのような性差があるのか、どうしたら真に平等で公平な施策が展開できるのかを考えるには、ジェンダーをめぐる構造的差別への理解とインターセクショナリティーの視点が必須です。これは、障害者福祉、外国人支援、文化・芸術、スポーツ施策推進に至るまで、あらゆる領域において同様です。

 改めて申し上げると、ジェンダー主流化とは、一見するとジェンダー中立に見える一般政策が、どのように男女に異なる影響を与えているのかを分析し、政策形成過程に反映するための戦略です。この社会には、性に基づく差別が存在し、行政がこの事実に目を向けない、あるいは無自覚であることは、意図せずジェンダー不平等や複合差別の固定化、再生産に加担することになり得ます。

 二〇二三年の世界ジェンダーギャップ指数では、百四十六か国中百二十五位という過去最低ランクをたたき出してしまった日本ですが、これは自治体を含め、何もしてこなかったことの裏返しです。ぜひ区には、口先だけではない、本気のジェンダー主流化を実践していただきたい。数ある行政計画の下で、全ての所管課がこの問題を自分事として捉え、今後、ジェンダー主流化の手法が確実に実行されるようにどのように体制を整備していくのか、見解を伺います。

 また、私が議員になって数か月ですが、理事者と話す中で、無意識のジェンダーバイアスに基づく発言が散見されるなど、まだまだ職員間でもジェンダー平等の意識が欠けていると感じています。区では、職員研修の一環として、男女共同参画研修を毎年一回実施しているものの、管理職はほとんど参加していないと聞いています。管理職向けのジェンダー平等研修の受講義務づけを求めます。あわせて、見解を伺います。

 次に、困難を抱える女性への支援についてお伺いします。

 今回は、若年女性にフォーカスし、居場所づくりとアウトリーチ支援の二点について質問をします。

 先日、若年女性支援を行う民間団体の研修講座を受講しました。この国の性売買の実態や、女性、少女を取り込もうとする性搾取の構造について学び、そうした社会を容認し、維持に加担してきた私自身の加害性や責任の重さにも向き合う機会となりました。コロナ禍を機に、都心の繁華街に集まる少女たちに注目が集まるようになりましたが、この問題は決して新宿歌舞伎町だけで起こっているわけでも、まして女の子たち自身のせいでもありません。これは、私たち全大人の問題です。

 研修受講後、夜の世田谷の町を歩いてみると、区内の主要駅周辺で、夜も深まると、女の子たちが所在なさげに看板などを下げて立ち始める光景が目に入るようになりました。区内に存在するガールズバーやコンカフェにも未成年が多く働いています。これを入り口に性売買業者とつながり、十八歳になった途端、より過激なサービスを要求される風俗店を紹介されるケースも多いそうです。

 当会派は、二〇一六年にいち早く、居場所がなく夜通し屋外で過ごす若年女性が抱える問題について議会で取り上げ、二十四時間の相談体制と一時保護、シェルター機能のある宿泊所の整備などを訴えてきました。

 コロナ禍を経た現在、問題は解決に向かうどころか、一層深刻さを増しています。かつて世田谷区内にかろうじて存在していた夜間を安心して過ごせる居場所も失われてしまいました。性売買業者は、居場所のない女の子たちに仕事や役割を与え、衣食住と関係性も提供しています。これは本来、性売買業者よりも先に公的支援や福祉が実践すべきものであるはずです。

 例えばNPOなどとの連携により、保護ニーズが高まる夜間、特に深夜帯の居場所づくりができないでしょうか。扉を開けないと入れない施設ではなく、屋外などに気軽に立ち寄れるスペースを設け、食べ物や日用品、Wi―Fiや充電器などを無料で提供し、相談や問題解決を第一の目的にしないで、ただそこにいられる、そんな場所が週一回でもあれば救われる子たちがいるはずです。

 世田谷で、家にも学校にも、あるいは児童館や青少年交流センターなどにも居場所がない子たちが性搾取構造に取り込まれる前に、地域にもっと居場所の選択肢を増やしてください。明日を生き延びるための彼女たち自身の居場所づくりに向けて、早急にNPOなどと連携し検討することを求め、区の見解を伺います。

 また、来年六月の困難女性支援法の施行に先立ち、国も様々な補助事業を創設しています。区は、今年度初めて地域女性活躍推進交付金の公募に申請をしたとのことですが、本事業には、NPOなどの知見や能力を生かしたアウトリーチ型支援や居場所づくりなど、行政の手が届きにくい支援を想定したつながりサポート型事業の枠があります。ぜひこうした交付金を積極的に活用し、民間団体などとの連携による若年女性支援の展開を求め、見解を伺います。出会いに行かないと出会えない子どもたちに会いに行く支援を区でも始めてください。

 最後に、外国籍住民の命と人権の保障についてお伺いします。

 まず、被仮放免者に対する区の対応について質問します。住民記録・戸籍課によると、九月現在、区内には十二名の被仮放免者の方がいます。この方々は、在留資格がない非正規滞在の状態にあるために住民登録がされません。しかし、国の方針にのっとり、令和三年十二月に全庁調査の上で区が取りまとめた三十の行政サービスに関しては、在留資格の有無や仮放免状態のいかんにかかわらず、行政上の便益を受けられることになっています。

 しかし、この行政サービス取組状況一覧を見ると、ほとんどのサービスが、もともと在留資格の有無にかかわらず提供しているため、毎月入管から提供される被仮放免者の情報を住民記録・戸籍課から各サービス所管課へ個別に提供する必要はないとされており、実際にサービス所管課に問い合わせてみると、在留資格の有無に関係なく、窓口に相談に来てもらえたら対応しますとの回答でした。これは、被仮放免者の置かれた状況に対して、あまりに理解が足りないと言わざるを得ません。

 在留資格を持たず、就労できない、医療保険に加入できない、生活保護も受けられない、移動の自由も制限される、仮放免の更新が認められず、いつ再収容されるかも分からない、こうした極度の不安・孤立状態に置かれたまま毎日引き籠もって生きている当事者がいます。たとえ滞在中にパートナーからのDV被害に遭ったり、障害があって健康状態が悪化したりしても、自力で行政の窓口に相談に行くのがどれだけハードルが高いことか、想像に難くありません。多文化共生条例を持つ区として、この人権状況をどのようにお考えでしょうか。

 いるのは分かっているけれども、こちらからは何もしませんという通常の申請主義に基づく対応ではなく、被仮放免者に対しては、その特殊性に鑑み、プッシュ型で情報を届けるなど、対応を検討してください。

 具体的には、区内の被仮放免者に対して、一、在留資格の有無にかかわらず利用できる行政サービスの案内、二、被仮放免者も使える無料低額診療制度の概要と、それを実施している区内三医療機関の情報、三、身近な相談窓口の少なくとも三点について、やさしい日本語とそれぞれの母語に翻訳した上で、登録先住所へ郵送で届ける必要があると考えます。前提として、現状の区における被仮放免者情報の活用状況はどうなっているのかお伺いします。

 また、被仮放免者だけでなく、区内に多く在住している留学や技能実習などの在留資格を持つ外国籍住民もまた、体調悪化や失業など、ささいなきっかけで誰もが在留資格を失い、非正規滞在者となるリスクを負っています。係る点に鑑み、クロッシングせたがやでの配架、ホームページ、SNSでの発信、外国人コミュニティーへの共有など、あらゆるチャネルを通じた情報提供を提案します。まずは、さきの三点セットを外国人相談窓口に配架し、一人でも多くの外国籍住民の方に届けるよう求めます。区の見解を伺います。

 以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

◎生活文化政策部長 私からは、四点の御質問をいただきましたので、順次お答えしたいと思います。

 初めに、ジェンダー主流化についてでございます。

 障害や国籍、就労をはじめ、様々な分野の課題に加え、ジェンダーによる課題が重なることにより、経済面や健康面、人間関係、さらには暴力や虐待など身体的危害に発展するなど、当事者の置かれる困難な状況は、より厳しくなってまいります。現在策定中の次期基本計画素案において、六つの理念の中に、「多様性を尊重し活かす」と掲げており、性別、LGBTQなどの性的指向及びジェンダーアイデンティティをはじめ、異なる立場や様々な価値観を持つ人々が共に社会を構築することとし、差別や偏見をなくすということについても含んでございます。

 ジェンダー平等の実現のためには、男女それぞれ異なる影響を及ぼすという前提の下、あらゆる分野における事業の計画、実施、評価検証等のそれぞれのプロセスにおいて、性別による不平等が永続しないように、お話しのジェンダー主流化を実践していくことが重要だと考えてございます。

 こうしたことからも、基本計画素案の理念にも基づき、庁内各部でジェンダーの課題に気づき、改善に取り組むよう、男女共同参画プランにおいてジェンダー主流化の全庁的な取組を推進する担当所管として、各部と連携、調整を図ってまいります。

 続いて、困難を抱える女性への支援について二点御質問をいただいてございます。

 初めに、居場所がない若年女性について、NPOと連携して支援すべきという点についてでございます。

 家庭環境の悪化等が起因となり、学校にも行かず、家にも帰らず、昼夜を通して居場所を失い、仕方なく新たな居場所を求めた結果、性被害や性的搾取の対象となってしまう少女や若い女性が潜在的には多数いると認識してございます。こうした女性たちは、区が行っているらぷらすや福祉等の相談窓口、若者向け施設である青少年交流センターや、若い女性の居場所であるあいりすにも来ないことから、その把握は難しく、様々な支援につなげようにも、こちらからアプローチができない、これが現状で課題に直結してございます。

 こうした中、夜間の居場所の整備が難しい中で、議員の御提案のNPOとの連携により、これまでアプローチが困難であった女性たちとつながることができれば、区としての支援に結びつけられる可能性も出てまいりますので、連携する団体等をしっかり見極め、御質問の趣旨でもある、少女や若い女性を性的被害から守る取組について検討してまいります。

 続いて、地域女性活躍推進交付金の積極的な活用についてでございます。

 区では今年度、国の地域女性活躍推進交付金を活用し、男女共同参画センターらぷらすで行っている女性相談、男性相談の拡充を目的に、主に困難、不安を抱える女性向けの相談支援を対象とした寄り添い支援型、主に男性の望まない孤独、孤立の解消を対象とした男性相談支援型の補助金を申請しているところでございます。

 今回はサポートする体制等が整っていなかったため申請できませんでしたが、議員お話しのつながりサポート型につきましても、今後、御提案のNPO等民間団体との連携が図られていく中で、改めて申請について検討し、孤独、孤立等の困難、不安を抱える女性支援につなげてまいりたいと考えております。

 最後に、外国籍住民の命と人権の保障についてです。多文化共生条例を持つ区として、その考えをということでございます。

 議員のお話しのありましたように、被仮放免者の置かれた状況は厳しく、それぞれ様々な課題に直面していると考えてございます。区は平成三十年に、全ての人が多様性を認め合い、人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的とする世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例を制定しました。

 この条例においては、年齢、性別、国籍、障害の有無等にかかわらず、全ての人が多様性を認め合い人権が尊重され、尊厳を持って生きることができることを基本理念としてございます。この考えに基づき、外国籍住民の方も含め、全ての人の命や人権が大切にされる社会の実現を目指し、取り組んでいるところでございます。

 以上でございます。

◎総務部長 私からは、職員研修におけるジェンダー平等の取扱いについて御答弁いたします。

 職員には、ジェンダー平等の意識を含む様々な人権感覚が求められており、区では、新規採用時や採用後五年ごとの節目の機会を捉え、人権研修を継続的に実施し、男女平等やアンコンシャスバイアス、無意識の偏見や差別などに対して正しい理解を得ることができるよう取り組んでございます。

 加えて、管理職につきましては、現在マネジメント力の強化を目的とした研修カリキュラムの見直しを進めており、職員の人材育成や組織経営の観点からもジェンダー平等の意識を高める研修内容とし、理解を深めてまいります。

 以上でございます。

◎地域行政部長 私からは、被仮放免者情報の活用状況について御答弁申し上げます。

 被仮放免者の取扱いにつきましては、法律に基づき、国が制度を運用しているものでございます。世田谷区に住居のある被仮放免者が生じたときは、月単位で東京出入国在留管理局より、住民記録・戸籍課に郵送で情報提供をされているところでございます。

 令和三年に、在留資格を有しない外国人に対する行政サービスの提供状況の調査を行っておりますが、被仮放免者にサービス提供を行うのに必要な対象者の情報を提供することができることを定期的に庁内に周知し、よりサービス提供できるよう、当該所管の把握に努めてまいります。

 私からは以上でございます。

◎世田谷総合支所長 外国人相談窓口での情報提供について御答弁いたします。

 世田谷総合支所では、日本語が不慣れな外国人の方を対象に外国人相談窓口を設置しており、英語及び中国語の専門相談員を配置し、その他の多言語については、タブレット端末を活用して様々な相談に対応しております。昨年度、四千二百五十件の相談があり、社会保険、年金や税金、医療、子育てなどの手続や生活に係る内容が多い状況です。

 御指摘の低所得者あるいは生活困窮者等を対象としました無料低額診療事業等の有益な情報も得られるよう情報発信に努め、丁寧に主訴をお聞きし、適切につながるよう関係機関とも連携し、取り組んでまいります。

  ◆おのみずき 議員 今回、被仮放免者に関する質問をしましたが、全ての人の命や人権が大事と言いながら、この問題に取り組む所管課はありません。国は、非正規滞在者に、それはいずれ送還する人という姿勢を貫いているんですけれども、今、世田谷区で共に生きている被仮放免者がいます。お願いです。見ないふりをしないでください。命にとっては今が全てです。やるべきときは……