第1回定例会 一般質問と答弁 2024・2・22 関口江利子

令和6年3月 定例会-02月22日

関口江利子 議員 通告に従い、順次質問いたします。

 最初に、災害時における高齢者、障害児者への支援に向けた地域の備えについてです。

 せっかく命が助かっても、被災した高齢者、障害児者は、慣れない環境においてQOL、生活の質を維持しにくくなるリスクが高いため、特別な配慮を必要とします。二〇二一年の介護報酬改定で、介護事業者におけるBCP、業務継続計画の策定が義務化されました。本年四月までに区内全事業者のBCP策定が完了すると聞いています。障害者支援事業所においても同様の災害への備えが求められています。

 厚生労働省の自然災害発生時の業務継続ガイドラインによると、訪問介護事業者は、安否確認とサービスの継続について前もって対応方法を決めておくこと、可能な場合には避難先においてサービスを提供することとなっています。つまり発災時には、現場の介護従事者を通じて、要支援者、要介護者の膨大な情報が収集され、これらの情報の有効活用を事前に考えておく必要があります。

 世田谷区では、自身での避難が困難と想定される避難行動要支援者に向けた個別避難計画の作成も進めています。しかし、介護度や障害者手帳の等級、世帯構成によって作成の対象者が決まっているため、対象から外れる障害児者もいます。そのような障害児者の安否情報等の把握と支援をどのように進めるのか、区の見解をお聞きします。

 また、在宅避難が困難になった障害児者にとって、慣れない避難所での生活は非常に負担となります。専門知識にたけた職員がおり、環境が整った福祉避難所への避難はおおむね三日後とされており、短期間で何度も環境の変化にさらされる避難は強いストレスを生んでしまいます。小学校の指定避難所経由ではなく、直接福祉避難所へ行けることが望ましいと考えますが、災害時の直接被害について区の見解をお聞きします。

 次に、年を重ねても安心して暮らし続けるために、訪問介護の事業者を守る施策について質問します。

 総務省の統計によると、団塊ジュニア世代が六十五歳以上になる二〇四〇年に、高齢者率は三四・八%、二〇四五年には三六・三%になると見込まれています。世田谷区が行った高齢者ニーズ調査によると、年を重ねても住み慣れた地域や自宅を離れたくないと望む人は、元気な人で九〇%、要介護状態になったとしても五〇%以上と高い結果が出ています。このような高齢者のニーズを支えるのは、自宅を訪問して生活を支える介護従事者の存在です。しかし、訪問介護従事者の不足は深刻で、有効求人倍率が二〇一三年の三・三倍から約十年で一五・五倍に膨れ上がっていることからも分かります。世田谷区の訪問介護の従事者は、正規、非正規職員合わせてこの四年間で四百一人も減り、状況の厳しさは増していると実感します。

 介護人材の育成、定着が進まない原因として報酬の低さが挙げられる中、このたびの介護保険の報酬改定により、二〇二四年度から訪問介護の基本報酬が引き下げられることになりました。国は、基本報酬は下げるが、処遇改善加算を手厚く拡充するとしています。一定の要件を満たすことで申請ができる処遇改善加算は、取れる区分によって加算額に開きがあり、全ての事業者が最上位の加算を取っているわけではありません。世田谷区においては最も高い特定処遇改善加算Ⅰが取れている事業者は二九%しかいません。種類が多く、煩雑だと非難され続けた加算は今改定で簡略されますが、区分ごとに加算額が積み上がっていくことには変わりがなく、事業者ごとに算定が異なるので、同じケアでも事業者によって利用者の負担額が変わるというおかしな状況がますます広がっていきます。

 報酬改定が示された現状では、処遇改善加算の取得がこれまで以上に訪問介護事業の経営の命綱となっていきます。中でも、要支援一、二の高齢者が利用する介護予防・日常生活支援総合事業は、介護予防の視点から質を落とさないことが重要で、地域包括ケアシステムの要とも言えますが、報酬の低いサービスであることから、取り組まない区内事業者の割合が四年間で一八・五%から二三・五%に増えています。ケアの効率化が推し進められる中、総合事業に取り組まない事業者は今後も増えていくと見込まれます。

 また、全く処遇改善加算を算定していない事業者も一五・七%あるため、改正後の事業継続が心配されます。区としても実態を把握し、事業者の声を聞くことが必要です。処遇改善加算をより上位で取れるように支援をするべきと考えますが、区の見解を伺います。

 最後に、子どもへの切れ目のない支援について、二つ、お聞きします。

 まず先に、昨年十二月、区内の認可外保育施設にて幼い命が失われてしまいました。心から御冥福をお祈りいたします。世田谷区として誠意を持って対応し、二度とこのようなことが起きないように指導や対応を行っていただくよう強く求めます。

 一つ目は、保育園の安全管理体制についてです。

 令和元年の幼児教育・保育の無償化において、国から経過措置つきで認可外保育施設にも指導監督基準を満たすことが示された際、世田谷区では経過措置を前倒しする条例を制定し、全ての施設が基準を満たせるよう指導して、その割合を増やしたと聞いています。大変すばらしいことで、保育施設の安全性に対する強い意思を評価いたします。

 さらに、令和二年度から児童相談所が世田谷区に移管されたことで、認可外保育園、認証保育園等への指導監督権限が移譲されました。もう十年以上前に私も認可外保育園に子どもを預けていたのですが、園の都合で契約更新ができなくなったとき、区の窓口に相談をしましたら、認可外には区から何も言えないんですと言われてしまいました。権限の移譲により、認可外保育園に対してこれまでできなかった指導を積極的に行えるようになったとの認識ですが、区の見解をお聞きします。

 また、認可、認可外関係なく、全ての施設に保護者が安心して子どもを預けることができ、子どもたちが安全な環境で成長できるよう再発防止も含め万全に整えていくことを求めます。

 次に、母子保健と児童福祉の連帯強化に伴う教育の関わりについてです。

 全国で児童虐待の相談件数は二十一万九千件を超え、過去最多を更新、日本でも痛ましい事件が報道されています。子どもへの虐待は絶対に許されない一方で、子育てに困難を抱える保護者も増えており、伴走型の支援が求められています。国は令和四年、児童福祉法を改正し、母子保健と児童福祉がそれぞれの役割で線引きするのではなく、一体的な支援体制の整備を努力義務としました。これに関して世田谷区では、国に先行して一体的な相談支援体制を構築しており、妊娠期から出産、子育てを支えてきたことは評価いたします。しかし、区内でも相談件数は増加しており、令和四年度は児童相談所に二千三百五十六件の相談が寄せられました。今回の改正を受けて、母子保健と児童福祉の連携体制やマネジメント力の強化に取り組むと子ども・若者施策推進特別委員会にて報告があったところです。

 新しい強化取組として、妊娠期からの面談や訪問を通じて支援対象者のニーズを書面化し、当事者家族、母子保健、児童福祉で共有するサポートプランが導入されることになりました。どこが作成するか等詳細はこれからとのことですので、ぜひ母子保健と児童福祉が一緒に作成する仕組みにしていただきたいと思います。

 また、妊娠から未就学児までの切れ目ない支援は強化されますが、気になるのは、就学時にタイムラグなく支援体制が組み立てられるのかという点です。小学校に上がる前の早い段階からサポートプラン作成、更新に学校も関わり、さらに切れ目をなくしていくことが必要と考えますが、区の見解を伺います。

 以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

   〔副区長登壇〕

◎副区長 認可外保育施設の死亡事故に関連して、保育施設の安全管理体制についてお答えいたします。

 まず、亡くなられた乳児の御冥福を心からお祈りいたします。

 区は令和二年四月の児童相談所設置と同時に、認可外保育施設に対する指導検査権限が都から移管されました。区はこの指導検査権限に基づく立入調査と区独自の保育サポート訪問を通じて、認可外保育施設に対して、保育の質の確保、向上に向けたきめ細かな指導助言を実践してまいりました。その結果、令和二年度に五割程度であった国基準を満たす施設は、現在は約九割に達しているところです。この点は、区が指導検査権限の移管を受けたことの一つの成果と考えております。

 今後、認可、認可外を問わず、区内の全ての保育施設に対して立入調査と保育サポート訪問をそれぞれ年一回以上、継続的に実施することを通じて、現場の実情や抱えている課題を十分踏まえた指導助言、支援を行うとともに、新たにゼロ歳児を預かる認可外保育施設を中心に睡眠時間帯の抜き打ち検査を継続的に実施してまいります。

 今後、認可、認可外にかかわらず、全ての保育施設の子どもが安全で安心して育つ環境を保障できるよう、検証委員会の検証結果も踏まえ、さらなる具体的な取組を進めてまいります。

 以上です。

◎障害福祉部長 私からは、二点、御答弁申し上げます。

 まず、災害時の福祉避難所への直接避難についてです。

 国において、令和三年五月に福祉避難所の確保・運営ガイドラインを改定し、災害時の直接避難等を促進し、要配慮者の支援を強化することとしており、区としても、障害者が安全に安心して避難できるよう検討することが必要と認識をしております。

 現在、区では、障害者施設等の福祉避難所連絡会を通しまして、風水害時の福祉避難所への直接避難について課題整理を進めているところでございます。その検討結果を踏まえて、災害時も含めた福祉避難所の避難方法等についても検討を進めてまいります。

 二点目に、避難行動要支援者ではない障害児者の安否情報の把握と支援についてです。

 令和三年の制度改正により、障害福祉サービス事業者は業務継続計画を策定することが義務づけられました。大きな地震等があった場合、各事業者は、事務所や施設の被災状況等を確認の上、個々の利用者の個別避難計画を踏まえ、安否確認を行い、職員体制を確保しながら、計画的に業務継続を行う必要があります。

 一方、障害福祉サービスの利用者には、障害者手帳の等級等から避難行動要支援者に該当しないために、個別避難計画を作成していない方も含まれます。各事業者はそうした方につきましても安否確認を行い、サービス提供を再開するとともに、相談支援事業所や各総合支所の保健福祉センター等と必要に応じて情報共有を図る必要があるというふうに考えております。

 災害があっても、住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう、障害福祉サービス利用者への災害時のサービス提供について事業者の理解を進めるとともに、情報共有の仕組みづくりについて関係支援機関等で検討してまいります。

 私からは以上です。

◎高齢福祉部長 私からは、総合事業訪問介護サービス事業者の処遇改善加算の申請支援について御答弁いたします。

 区内には二百六十の訪問介護事業所があり、区ではこのうち約二百事業所を総合事業訪問介護サービス事業所として指定しております。また、そのうち約八割以上の事業所が加算を取得している状況です。介護職員等の処遇改善などを目的とした加算については現在三種類あり、令和六年度より一本化される予定です。また、加算取得のための申請書類の簡素化や手続のオンライン化なども行われてきており、都では、東京都社会保険労務士会による加算取得促進支援事業も行われております。

 処遇改善加算の取得は、介護職員の確保、定着に直結するものであるため、区といたしましては、より多くの事業所が加算を取得できるよう申請手続に関する周知とともに、加算取得促進支援事業などの有益な情報の発信に努めてまいります。

 私からは以上です。

◎子ども・若者部長 私からは、教育との連携による切れ目のない支援について御答弁いたします。

 これまでも子ども家庭支援センターでは、毎年、要保護児童支援地域協議会を開催し、学校をはじめとする関係機関が一堂に会し、顔の見える関係をつくりながら、支援が必要な子どもや家庭に関する意見交換を行うなど、必要な連携体制の構築に努めてきたところです。令和六年度から導入しますサポートプランについて、国のガイドライン案では、支援対象者自身が自らの課題と得られる支援内容を理解し、円滑に支援を受けることに加え、支援対象者に関わる関係者が支援内容等を共有し、効果的な支援を実施するためのものであるとされており、学校等の関係機関との間であらかじめ支援内容を共有し、早期に関わりながら、支援体制を構築するといった取組も考えられるところです。

 今後、これまでの取組も継続しつつ、サポートプラン作成に当たっては、学校等関係機関との連携による早期対応の視点も踏まえ、必要に応じて要保護児童支援協議会の個別ケース検討会議で支援方針や役割分担を共有するなど、運用についても工夫しながら、これまで以上に切れ目のない支援体制を構築してまいります。

 以上です。

◆関口江利子 議員 東京都では、介護職員等への処遇改善について、国が必要な見直しを講じるまでの間として特別手当が予算で組まれ、実質基本方針の底上げがされる見込みです。生活者ネットワークとしても、区で独自施策を講じるべきと求めてきましたが、引き続き追求してまいります。