第1回定例会 予算特別委員会 企画総務の質疑応答 2019.3.7 高岡じゅん子

第1回定例会 予算特別委員会 企画総務の質疑応答 2019.3.7 高岡じゅん子

 

財政基盤の健全性に関して質問いたします。区の借金についての質問です。

 

来年度の予算書を見ますと、区債の利払いや返済に充てる公債費が平成三十年度比一五・二%の増加となっています。今後、区役所の本庁舎建てかえなど大型の投資が必要となり、平成三十二年度には起債残高が基金残高を上回っていくという見通しのある中で、公債費が前年度比これだけ伸びているというのは大変気になることです。今年度に比べ来年度の公債費が増大した理由についてお答えください。

 

財政制度担当参事 平成三十一年度予算案では公債費を五十七億円と見込んでおります。前年度、今年度よりも一五・二%、七億五千三百万円の増となっております。

 

主な増要因といたしましては、毎年十億円規模で発行しております区民債、せたがや区民債を平成二十五年度は発行しなかったため、五年後の満期一括償還期限となる今年度、平成三十年度での償還がございませんでしたが、来年度の平成三十一年度につきましては、平成二十六年度に上用賀公園などの用地取得を目的に発行いたしました区民債十億円分の償還が生じるためでございます。

 

確かに昨年度の公債費は四十九億五千万円と過去十年間で一番少なくなっています。分母が少ない中で償還金に充てる支出により前年度比が伸びたということなのは、今の説明で理解できました。しかし、ふるさと納税の影響や、国の東京都に対する財源の収奪など、世田谷区の財政に関し暗い話題がマスコミをにぎわしている中で、公債費が一五%以上もふえているというのを見ると、区民としては世田谷区の今後の財政に不安を感じてしまいます。

 

単年の基礎的な財政収支、プライマリーバランスは今年度から赤字に転じて、今後数年は黒字に戻らないという見込みも出ています。こういった中でも、世田谷区の財政が今後も健全性を保てると言える根拠をお示しください。

 

財政制度担当参事

現在事業中の梅ヶ丘拠点整備、また玉川総合支所区民会館の改築、小中学校の改築、また二〇二〇年度から着手予定の本庁舎の整備など、公共施設の整備に当たりましては、財政負担の平準化を図るため、基金と起債の計画的な活用が不可欠となります。これら事業の財源として起債を活用することによりまして、二〇二一年度以降、公債費は百億円を超える見込みとなってございます。

 

今般お示しいたしました中期財政見通しでは、今後の税収見込みにつきまして、人口の増加に伴う納税者数の増などにより一定の増収を見込んでおりますが、海外経済の流動性、不確実性や、また金融、資本市場の変動の影響、また二〇二〇大会後に景気の後退が懸念されるなど、区財政は先行き不透明な状況にもございます。

 

こうした中、将来の備えとして、今般の補正予算及び当初予算案におきまして、財政調整基金への積み立てを行いまして、二〇一九年度末の財政調整基金の残高見込みを予算規模の約一割となる過去最高の三百十一億円としたところでございます。また、学校施設の耐震補強工事や体育館への空調設備設置などに備えまして、義務教育施設整備基金へ約五十一億円の積み立てを行っております。

 

今後も将来の財政需要や予期せぬ景気変動に耐え得るように、不断の行政経営改革に取り組むとともに、引き続き基金残高の確保に努めるなど、持続可能で強固な財政基盤の確立に努めてまいります。

 

基金を積み立てて景気変動に備え、自己資金を積んでおかなくては安心できないという構造というのは、老後資金を心配せざるを得ない家計から、不況時の資金繰りのために内部留保を厚くしている企業、そして区も共通のものがあるというふうに感じます。消費税の増税など税の負担の増が暮らしの安心感の増大につながっていないということが課題ではないかと感じております。

 

それで、幼児教育や保育の無償化とか、安心して子どもを育てやすくするための教育費の負担軽減について、私どもも注目しております。今議会でも多くの会派が意見を述べておられますが、そもそも日本の教育関連予算というのはGDP比で三・四七%で、最新の国際比較では百五十四カ国中、何と百十四位という形で低迷しています。

 

保育、教育などに係る費用を誰がどのように負担していくかという課題は、子ども自身の育つ権利や学ぶ権利の保障として捉えることが必要ではないかと私たちは考えています。生活者ネットワークは、そのように考えた場合、親の年収や親の働き方の差によって子どもの支援に差が出ないような本物の無償化こそが一番望ましい形ではないかと考えます。

 

世田谷区は、年収制限のない中学生までの子ども医療費の個人負担の無償化を実現しています。こういった医療助成のあり方は、ぜひ今後も維持すべきものだと考えています。

 

しかし、さらなる無償化の拡大ということに向けますと、財源の確保が最大のネックになります。そこで、ことし始まります子どもの学ぶ権利や育つ権利を保障するための財源の問題、無償化です。国の施策である幼児教育・保育の無償化について伺います。

 

これはやはり東京都の特に二十三区の自治体に対して永続的な財源保障のないまま進んでいっているということに私たちは疑問を感じています。本来、どこの県に住んでいようが、都に住んでいようが、全ての子どもに平等に幼児教育・保育の無償化が実現できるように、国が財源を含め保障すべきものではないかと考えますが、区の見解を伺います。

 

財政制度担当参事

本年十月より実施されます幼児教育・保育の無償化につきましては、本来、国がみずからの責任と全ての財源を確保するべきものと考えておりますが、国では二〇一九年度における地方負担分につきましては臨時交付金を創設し、全額国費で措置することとなりましたが、二〇二〇年度以降は負担割合に基づき区の新たな負担、年間約二十五億円を見込んでおりますが、生じることとなります。

 

また、本来、無償化等の原資となる消費税率引き上げによる地方消費税交付金の増収分につきましても、税源の偏在是正措置の名目で、二〇二一年度以降、年間約三十九億円減の影響を見込んでおります。一般市におきましては、地方消費税交付金の増収分で賄えない無償化に係る地方負担分は、地方交付税の基準財政需要額に算入されますが、地方交付税の不交付団体になります特別区の場合、保有の財源となる財政調整交付金による対応とならざるを得ないこととなります。

 

今後、さらに都市部からの税源収奪などの動きがある場合には、地方間の財源調整ではなく、国の責任において必要な財源措置を講ずるべきであることを区長会等を通じて強く主張してまいりたいと考えております。

 

区としても、今後とも国に対して主張すべきことは主張し、きちんとした財源の裏づけを求めていくことを要望いたします。

 

また、都の最近出ました予算案におきまして、都独自の無償化の上乗せというものについても触れられています。安定した財源として活用できるかも見きわめながら、必要に応じ適切に活用することを求めます。

 

こうした保育の無償化のような新たな施策の思いがけない影響など、区財政の健全性を本当に保っていけるのかということは、区民の大きな関心事になっています。ぜひわかりやすくバランスのとれた区民への情報提供が必要だと考えます。

 

今年度から複式簿記や財務諸表などを活用した新公会計制度への移行が始まります。区の財政の一層の透明化を図ることができ、区の財政状況についてよりわかりやすく区民へ伝えていけるんではないかと考えますが、区の見解を伺います。

 

財政制度担当参事

区では、これまでも毎年度発行しております世田谷区の財政状況におきまして、官庁会計による決算の状況に加えまして、企業会計手法による区の資産の状況や減価償却費などを含めた財務情報の公表に努めてまいりました。

 

今後は、今年度から導入しております新公会計制度を活用いたしまして、一層の精度向上を図るとともに、例えば人件費や減価償却費を含めたフルコストによる自治体間での比較や経年によるコスト分析など、他自治体における取り組み事例なども参考にしながら財務情報の内容の充実を図るなど、区民にとってもよりわかりやすい財政状況の公表に努めてまいります。

 

大きな財政収支のバランスだけではなく、一つ一つの事業経費のコストまで区民に公開していくということは、やはり自分たちの払った税金がどのように生かされているのか、使われているのかという実感を持つことで、区民の区政への関心を高め、必ずしや自治意識の向上にもつながると考えます。着実に進めていくように求めます。

 

話題を変えまして、女性の視点を生かした災害対策の推進として、液体ミルクの活用について質問いたします。

 

昨年の秋、北海道胆振東部地震の際には、東京都が救援物資としてフィンランド製の液体ミルク千個以上を北海道庁に提供し、被災地にまでは届いていたにもかかわらず、活用されなかったという残念な事態が起こっています。ことしの春にも、日本でも国産の液体ミルクの販売、流通が開始される見込みです。また、他区で液体ミルクの備蓄を開始した区もあり、都も流通事業者と協定を結び、災害時に液体ミルクの手配が可能な体制になってきています。

 

区として、このような情勢の変化に対応し、災害時の液体ミルクの活用に向け準備を進めるべきではないかと考えますが、区の見解を伺います。

 

災害対策課長

液体ミルクにつきましては、平成二十八年に起きた熊本地震をきっかけに、政府が国内での流通に向けて検討を開始しまして、昨年八月、厚生労働省が調整液状乳として、製造販売を可能にする省令を施行しました。その後、国内メーカーによる製造承認の取得がなされ、今後、消費者庁の許可などを得て、商品化されると報道されております。

 

液体ミルクは、粉ミルクよりも手軽に扱うことができる反面、価格面や賞味期限、開封後の保存期間、味の好みなどの課題が挙げられております。区といたしましては、災害時に都の協定先からの調達も可能であることから、基本的には自助による備蓄を推奨しながら、厚生労働省がこの四月にも策定する液体ミルクについてのガイドラインや、他自治体の動向を注視するとともに、災害時に避難所で活動される女性防災リーダーの方々などへの情報提供等に努めてまいります。

 

福祉避難所母子型に関して、来年度、平成三十一年度はマニュアルの作成などさらに準備が進むというふうに予定されています。今養成している、先ほどお話がありました女性防災リーダーなどからも意見を上手に引き出しつつ、災害時の液体ミルクの活用に向けて準備を進めていただくよう要望いたします。

 

最後に、誰もが使いやすい本庁舎の実現に向けて質問いたします。

 

多様性を認め合う共生社会の実現を目指す世田谷区としては、新たにつくる本庁舎を誰にも使いやすいユニバーサルデザインに基づくものにすることは必須の条件と言えます。今年度は、基本設計の確定に向け、設計事業者主体での区民参加のリング会議が実施され、さまざまな意見や提案があったと聞いています。現在の検討プロセスでの状況についてお伺いします。

 

施設営繕第二課長

基本設計案を策定するに当たりましては、世田谷区ユニバーサルデザイン推進計画に基づき、都市デザイン課が開催しておるUD検討会に三回参加し、さまざまな障害者団体の方と三つのテーマを設定し、意見交換を行ってきました。

 

また、設計段階における区民との意見交換の場として実施いたしました世田谷リング会議においても、委員として障害者団体の代表の方にも参加していただき、各段階における設計者の検討内容について、使いやすいトイレ、災害時の車椅子の避難方法、リングテラスへのスロープの設置等の御意見をいただきました。

 

これらの御意見を踏まえ、基本設計案では、多様な方の利用に対応したトイレの設置、障害者等の避難を考慮した非常用エレベーターの設置について反映し、リングテラスへのスロープの設置の検討につきましては、今後さらに検証することとしました。

 

さまざまな当事者が参加するUD検討会の役割が大きいということがわかりました。来年度はいよいよ実施設計に取りかかるわけですが、本当に使いやすい建物になるかどうかはやはり細部の設計のよしあしにかかってきます。障害と一口に言っても障害種別、程度、使っている補助具や補助犬の同伴など、それぞれの条件により公共施設利用時に思いがけない困り感を持っていらっしゃる方がいらっしゃいます。

 

昨年、他区の議会棟を見学したときに、車椅子席を一番前に持ってきたところ、ちょうど手すりが目の前で大変見にくくなってしまった、大変残念だと担当の方がおっしゃっていました。この方は、もっと当事者の方に直接話を聞いておけばよかったとおっしゃっていたのが印象的です。

 

実施設計に向けて、来年度さらに丁寧に当事者の声を聞いていく必要があると思います。見解を伺います。

 

施設営繕第二課長

このたび策定いたしました基本設計案につきましては、三月十三日に障害者団体への説明を行い、当事者の御意見を伺いながら、さらに検討を深めていく予定であります。お話しの実施設計段階におきましては、今後、詳細な検討を進めてまいりますが、引き続き、当事者の御意見を伺いながら設計を進めてまいります。

 

今後もさまざまな利用者の立場に立ったきめ細やかな配慮によって、高齢者など、全ての人が利用しやすい本庁舎となるように取り組んでまいります。

 

本当に全ての方が使いやすい本庁舎になることを願っております。