高岡じゅん子 議員 通告に従い、順次質問します。
初めに、新型コロナ感染症予防と安心の見せ方についてです。
東京都の新規感染者が連日四百人以上と報じられると、この後どうなってしまうのか誰もが不安になります。不安だけでなく、この感染症に対する無力感が区民の中に広がっていくということを危惧いたします。
無力感の裏には二種類の不安があります。第一は、幾ら感染症予防対策をやっていても、それでは十分なのか分からないという不安です。さらに、もしかかってしまったらどうなるのか。残念ながら、マスコミでも、ほかの情報源でも、深刻でセンセーショナルな事例は大きく取り上げますが、きちんと対処され回復したという事例はほとんど取り上げられません。そのため、コロナになると大変だ、周囲に知られると差別や不利益があるのではという第二の不安が増大してしまっています。区民啓発により、この二つの不安を取り除くことが必要です。
まず、感染症防止対策の具体的な指導を、もっと目に見える形で進めるべきです。世田谷区では独自の制度として五月から感染症予防アドバイザーを設け、新型コロナ感染症予防のレベルアップを図っていると聞いています。現在の活動状況を伺います。
こういったアドバイザーの存在を区民に広く知らせ、必要に合わせ出向いて指導してもらうほか、実際に指導の様子を動画配信することなどで、区の取組への理解や、それぞれの場での予防のレベルアップを図ることができるのではないでしょうか。
感染予防に向けた啓発動画の配信は、既に多くの自治体が実施しています。例えば神奈川県では、会食の機会が増える季節に、いち早くマスク会食についての動画を配信しています。食事の場をどう安全にできるか、特に高齢者会食や子ども食堂など、外出機会の確保や食支援のため、再開や継続が望まれる活動を安全に行うための知恵が、今、必要とされています。
また、差別の感染防止も非常に大切な課題です。私たち会派は当初から人権に最大限に配慮した対策を求めてきました。しかし、ホームページの文字や言葉では心に届きません。特に、感染から治り、地域に戻ってきた人たちを自然に受け入れる土壌をつくっていくことが急がれます。これについては、文部科学省や日本赤十字などがリンクできる短い動画を既に作成しています。これらの活用のほかにも区独自の啓発動画も制作できないでしょうか。
新型コロナ感染症予防の周知のため、子どもや高齢者などにも分かりやすい動画の作成や活用、ホームページを通じての配信とくみん窓口待合スペースなどでの上映が有効だと考えます。区の見解を伺います。
次に、コロナ禍の共生社会実現に向けて質問します。
今回の新感染症では、重い障害児者と共に暮らす家族にも今までにない負担がかかっています。東京都では学校の一斉休校に合わせ、重症心身障害児(者)等在宅レスパイト事業について、今まで一回四時間単位でしか認められなかった補助対象を、より短時間でも認めるという取扱要領の柔軟な対応を実施しています。
この事業は障害者自身を支援するだけではなく、ケアする家族や共に育つ兄弟などを含めたケア者支援としても重要な事業です。コロナ禍をきっかけに利用者目線で見直しがされた対応を来年度以降も活用し、障害者の家族も含め、誰もが自分らしく暮らせる社会に向け着実に進んでいくべきではないかと考えます。区の見解を伺います。
短時間・短期間雇用マッチング事業と介護人材の確保についても質問します。
高齢者介護の慢性的人手不足は、コロナ禍により、さらに厳しいものとなっています。介護の現場は命を預かる仕事です。一定のスキルが要求されます。人員配置基準なども守って運営されなければなりません。入居者数に合った介護の配置のため、やむを得ず臨時の派遣職員を頼み、シフトを何とか回しているということを聞いています。
新たな介護人材が介護現場に目を向けるきっかけをつくり、介護の裾野を広げる取組として、今回の事業には期待が寄せられています。その一方、チームワークで介護の質を高めていく視点から、初心者を職場で上手に活用するための仕事の切り出しなど、受入れ現場での準備は課題です。一時しのぎでなく、中長期的な人材育成につながる戦略的な取組が必要ではないでしょうか。
介護現場の人材不足に対し効果的な事業とするため、どのように取り組んでいくのか、区の見解を伺います。
この事業により、短時間勤務で働く人たちはダブルワークが前提となります。このような新しい人材が施設に出入りするようになるということは、感染リスクが増えることも意味しています。短時間勤務の方でも社会的検査の対象となるのか、確認のため質問いたします。
最後に、参加と協働を進めるための地域行政の在り方について質問します。
新型コロナ対策は地方分権、住民の立場に沿った自治の力が試されるものとなっています。地域での不安の声や、医療や介護の現場から上がってくる問題に対し、市民目線を生かした解決方法を、行政の組織や予算を活用し実現していけるかの試金石です。
この状況下で世田谷区は地域行政制度見直しを進めています。世田谷区は九十二万人にも及ぶ多様な人々が住み、地区ごとに伝統と特色のある区民活動が根づいています。その中には、コロナ禍の下、今までどおりの実施が難しくなっているもの、継続の手法を模索中のものなども多くあります。
生き生きとした区民の活動は区民の主体性から生まれます。多様な住民の声を取り入れた課題の発見から始まり、区民同士の対話や、行政担当者を交えた問題解決型の議論を通じた意思決定、そして、小さいものでも成功体験が地域活動を活性化していきます。条例制定に当たり、このような活動実現のため、予算確保を含む実効性のある仕組みづくりが求められます。現場の最前線である地区まちづくりセンターがどこまで区民に寄り添った支援ができるのかが、その鍵です。
住民が主体となった地区の課題解決に向け、協議の場をまちづくりセンター中心につくっていくことが必要であり、具体的にどのように考え、実効性のあるものとして条例の中に位置づけていくのか、区の見解を伺います。
世田谷区基本構想には、一人でも多くの区民が区政や公の場に参加できるようにするという理想像が書かれています。しかし、基本構想の中では、地域行政は、最終ページの実現の方策の一部に地域行政と区民参加として登場するのみです。区民参加によるボトムアップの区政を実現するために(仮称)地域行政条例をつくるのだと理解していますが、改めて地域行政とは何か、また、条例化の意義について確認させてください。
以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
岡田 副区長 私からは、地域行政の条例化の意義について御答弁申し上げます。
平成二十五年に策定した世田谷区基本構想では、九つのビジョンの一つに「ひとりでも多くの区民が区政や公の活動に参加できるように」するという目標を掲げ、自治の担い手である区民が区政に参加できる機会を設け、また、地域の課題解決に取り組む区民や団体が互いに協力して自治を進められるよう支援するとしてございます。また、九つのビジョンを実現するための方策として、総合支所、出張所・まちづくりセンターなどでも区民が区政に参加する機会を数多くつくっていくという、きめ細かい地域行政の展開を掲げております。
(仮称)地域行政の推進に関する条例の目指すところは、地域コミュニティーの促進を図り、区民や事業者など多様な方々が地域の担い手としてまちづくりに関わっていくこと、また、地区、地域の住民意思を的確に反映することができる地域内分権をさらに進めることの実現であります。
本条例の制定を契機といたしまして、区民と行政が地域行政制度の下に区民主体のまちづくりを推進する共通の認識に立ち、区民に開かれた参加の下に多様な声を受け止め、参加と協働による地域課題への取組をさらに進めることにより、基本構想に掲げるビジョンの実現につなげていきたいと、このように考えているところです。
以上でございます。
澁田 保健福祉政策部長 私からは、感染症予防アドバイザーの活動状況と、感染予防の啓発の工夫についてお答えいたします。
区では、社会福祉施設等での感染拡大防止や業務継続への支援のため、感染症対策アドバイザーとして医師と感染管理認定看護師の二名を、希望する社会福祉施設などに派遣する事業を行っております。十一月までに五施設を訪問し、サービス提供時の感染防止策やゾーニング、更衣室や休憩室での予防策などについて助言したほか、区の所管課での施設の疑問、質問を取りまとめたものにメールで回答をいたしました。施設等には関係者の連絡会などで案内を行っているほか、PCRの社会的検査の案内の際にお知らせをしまして周知を図っております。
今後、感染症対策アドバイザーや関係する区の事業所管などと協議をいたしまして、派遣先の対象拡大や、オンラインやメールでの相談など、さらに有効に感染予防に活用していただけるよう検討をしてまいります。
以上でございます。
辻 世田谷保健所長 私からは、新型コロナ感染症予防の動画の活用についてお答えいたします。
高齢者の会食や子ども食堂等の各所管課では、緊急事態宣言解除後の区民活動の再開や継続に当たり、これまでも新型コロナウイルス感染予防に関する注意点や、会場の消毒方法等に関する情報提供のチラシなどを作成し、周知に努めております。
議員お話しの、感染症予防に関する分かりやすい動画の活用や、区庁舎での上映等を行うことは、区民への感染予防の啓発や正しい知識の普及のためにも有効な取組であると考えます。感染予防の動画につきましては、現在、国や公的機関のほか、企業等でも分かりやすい動画を作成し公開していることから、これらを活用することも効果的、効率的であると考え、一部の区の事業での活用も検討をしております。
なお、動画の活用に当たりましては、高齢者や子どもの会食等に関しまして、それぞれの活動の特性なども踏まえ、効果的な情報提供を行う必要もありますので、各関係所管とも連携し、効果的な周知を図ってまいります。
私からは以上です。
片桐 障害福祉部長 私からは、在宅レスパイト事業についてお答えいたします。
区では、重症心身障害者等を介護する家庭に訪問看護師を派遣し、御家族の休息の機会などを提供する在宅レスパイト事業を、都の補助事業を活用し実施しております。区では、都の運用に準じ、新型コロナウイルス感染症への対応として、月四回までの利用上限を令和二年度については設けず、年間九十六時間まで利用可能としたことで、今年度十月末時点で二名の方が月四回を超える利用をされております。
今後のコロナ禍の先行きが不透明な中、重症心身障害者等の御家族が安心して社会参加できることは大変重要であり、次年度に向け現在の取扱いが継続されるよう都に対して要望してまいります。
以上です。
田中 経済産業部長 私からは、介護人材確保について答弁いたします。
コロナ禍の影響により、人材不足産業へ就業希望者が流動していくことが見込まれる状況もあり、このたび、介護等人材不足産業を中心とした短時間・短期間雇用マッチング支援事業を、来年度まで継続的に実施する事業として今回提案させていただいております。
介護人材のマッチングを進めていくためには、仕事を探している方に介護業界の仕事の魅力を発信し、就職まで丁寧な支援を行うことが重要であると考えております。そのため、本事業は、仕事を探している方がオンライン説明会や事業所での職場体験を経てキャリアカウンセリングを受け、介護などの仕事の内容や働く環境をよく理解した上で就職先を決めていく事業としております。
あわせて、介護の仕事に親しみを持ってもらえるよう、有名雑誌とのタイアップによる魅力発信も行うことなどを検討し、引き続き関係所管と連携しながら、介護分野の人材確保支援に取り組んでまいります。
私からは以上です。
有馬 保健福祉政策部次長 私からは、社会的検査の対象についてお答えいたします。
社会的検査は、施設内における高齢者の重症化回避と感染を防ぐため、介護事業所等の職員または利用者を対象としております。職員の範囲について具体的に御説明しますと、利用者に直接支援する方に限らず、事業所内で勤務する事務員や給食、警備、送迎運転手などの委託先の職員や、複数の事業所で勤務するダブルワークの方も広く対象としており、常勤、非常勤、アルバイトなどの雇用形態につきましても全ての方を対象として実施しております。
私からは以上です。
清水 地域行政部長 私からは、課題の解決に役立つ協議の場について御答弁いたします。
地域住民が抱える様々な課題を地域で解決するためには、町会・自治会をはじめ社会福祉協議会、NPOなど多様な活動団体や地域住民がより連携、協力してまちづくりに取り組む必要があり、まちづくりを支援する区の役割も大変大きいものと認識しております。
支援制度や活動目的が異なっても、同じ地区、地域で活動する団体や住民が、その垣根を越えて、それぞれの抱える課題を持ち寄り、お互いの活動内容や実施体験を共有し、解決に向けた話合いができる機会を重ねることが、活動の幅や担い手を広げ、地域の活性につながると考えます。
このため、地域行政改革の重点的な検討課題として、地区においては多様な活動団体や地域住民に開かれた参加しやすい協議の場づくりを掲げ、その機能や権限の在り方を検討しております。条例化や条例の推進計画の策定において、地区課題を住民が共有し、地区からの発想や、まちづくりの提案を踏まえ、実現に向けて区との役割分担や予算に関して協議するなど、実効性のある仕組みについて検討を進め、取り組んでまいります。
以上です。
高岡じゅん子 議員 まずは介護人材確保について意見を申し上げます。
やはり本当に切実な問題になっています。今回の事業にも一定の確保の効果というのは期待されていますが、やはり何といっても、業務の切り出しや受入れ先での初心者を介護現場に受け入れる準備ができるかということが、事業成功の鍵だと思います。補正予算で開始しますが、来年度以降も継続する事業ということでしたので、この事業をきっかけに新たな人材の定着につながるように、高齢福祉課においても部においても腰を据えた取組を求めます。
また、今、国の介護報酬部会において来年度以降の介護報酬の議論が進んでいます。若い世代が一生の仕事として就業できるような報酬体系や、また、就労環境に一歩でも近づくことが、人材確保には何よりも必要だと考えております。本当に人材確保に向けては、保育の人材確保で実施されているような区独自の支援についても、ぜひ検討する必要があるのではないかということを重ねて提案させていただきます。
地域行政についてです。いつも三者というのがいるんですけれども、それが一体となって、まちづくりセンタースタッフとして、地域住民の方と安定した信頼関係をつくって、そして、職員の方のほうから積極的に区民に寄り添うということが必要です。新たな地域行政制度が、行政と区民が対等なパートナーとして地区課題の解決に取り組んでいけるような、そんなものになることを期待しております。
以上で質問を終わります。