令和4年9月 定例会-10月21日
高岡じゅん子 議員 生活者ネットワーク世田谷区議団を代表し、令和三年度世田谷区一般会計決算認定外四件全てに賛成の立場から意見を申します。
令和三年度は、何といっても新型コロナの感染症の影響からいかにして区民の命と暮らしを守るかということが求められた一年でした。昨年度行ってきたリスクの高い高齢者や集団生活の場に焦点を当てた随時検査や積極的な抗原検査キットの配布などを評価します。オンライン診療の仕組みなどを区民に周知し、今年の冬の第八波、インフルエンザとの同時流行に備え、的確な対応を今後も求めます。
今年二月からのロシアによるウクライナ侵攻、円安などによる物価の急激な上昇は、全ての区民生活に影響を与えています。生活者ネットワークは、子育て世代への負担軽減、特に全ての子どもに対する育つ権利の保障として、公教育の全面無償化を求めてまいりました。食材費高騰分を区費で賄うというだけではなく、食育としての給食費自体を公費負担とし、有機米など、より安全な食材を使った給食を確実に子どもたちに提供していくことを求めます。
コロナ禍は、それまでに明らかになってこなかった社会のゆがみ、格差や孤立の問題を明確に映し出しました。非正規、フリーランスなど不安定な収入源で暮らす比較的若い層の区民が、住居確保給付金やコロナ特例で設けられた様々な給付制度に今も頼って暮らしています。
令和元年九月から今年の九月までの三年間で、世田谷区の三十代、四十代の人口は一万八千人も減りました。女性、若者、非正規雇用に焦点を当てた福祉と雇用、就労、両面からの柔軟な支援の充実を求めます。
世田谷区役所は区内最大級の雇用主であり、事業発注者です。区民への公的なサービスは正規職員だけでなく、様々な働き方の方々が担っています。雇用形態や契約形態を問わず、フリーランスまでを視野に入れたハラスメントを防ぐ取組が必要です。
ジェンダーにとらわれることなく、誰もが私らしく生きられる社会をつくっていくことがジェンダー主流化です。そのためにも、まだまだ女性のエンパワーメントが必要です。多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例を持つ世田谷区として、人権の視点に立った施策をさらに進めることを求めます。
特に人権としての性教育、幼児期から大人まで包括的性教育が必要とされています。世田谷区では今、区長部局と教育委員会、区内医師会、助産師会などからメンバーを集め、思春期世代に向けてリプロダクティブ・ヘルス/ライツについての周知啓発を図る専門部会が行われています。この部会での討議を生かし、性交についても含めた正確な知識教育と、自分とパートナーを大切にできる人権教育の両輪で、自信を持って包括的性教育を進めてください。
環境施策についてです。世田谷区は、二十三区清掃一部事務組合に応分の負担をし、ごみの中間処理を行っています。建て替えの進む世田谷清掃工場の現状などを区民により積極的に情報提供し、ごみ処理のコスト意識を高め、資源循環型社会実現に向け、区民の協力をさらに引き出していくことが必要です。
区の公共施設のZEB化に向け、指針づくりに着手していることを評価します。既存施設の省エネ改修なども含めて実効性のあるものにするため、今後、具体的な数値を定めての取組を望みます。将来の太陽光パネル廃棄の問題なども視野に入れ、ゼロカーボン・アンド・ゼロエミッションを目指してください。
異常気象や国際社会の不安定化により、食の安全、地域自給に関する関心が高まっています。区民参加で小さな空き地を農地として利用し、活用するエディブルシティの活動を支援し、有機農業への理解を高め、区内でのゲノム編集食品の作物を育てない、そういった啓発等を求めます。
香害、香りの害についてです。香りは空気に漂う化学物質です。香害について、区職員、保育施設、区立学校など、引き続き保健所と連携し、柔軟剤などでも化学物質過敏症を引き起こすことがあるということを周知、啓発していく必要があります。
高齢者福祉についてです。介護保険制度は黒字ですが、コロナ禍の影響で通所系の事業所などでは経営が苦しいところも出ています。コロナ対策のかかり増し経費補助や高騰する光熱費対策など、適切な支援を求めます。今回積み増した基金を保険料の上昇の緩和やサービスの充実に有効に活用することを求めます。
コロナ禍により、施設も、家庭も閉鎖的になりがちで、高齢者虐待が見過ごされていることが懸念されます。こんなときこそ、第三者評価制度を活用し、ケア現場の質の維持向上に役立てることを提案します。
外出機会が減りがちな高齢者にとって、公共交通の充実が望まれます。砧地区での実証実験を成功させ、持続可能な外出手段を確保してください。
今定例会で、世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例が可決されました。障害を理由とする差別の解消、安心して暮らし続けることができる地域づくり、参加及び活躍の場の拡大などが目的とされています。しかし、障害者の方が親亡き後も安心して住み続けられる地域移行は進んでいません。グループホームのさらなる開設を求めます。精神障害者の施設からの地域移行をピアサポーターが支援する仕組みに期待しています。障害当事者の参加と活躍の場を広げ、例えば農福連携の農場などで、地域のボランティアと共に働けるようなインクルーシブな地域づくりを求めます。
また、今議会で成立したもう一つの条例が、世田谷区地域行政推進条例です。生活者ネットワークは、既存の町会・自治会だけでなく、住民同士の顔の見えるつながりや地域グループの活動などによるコミュニティーの活性化に向けた行政の支援を長年求めてきました。今、子ども食堂は区内に六十か所ぐらいあると言われています。地区、地域の活動を活性化し、年齢を問わない誰でも食堂のような形のものが全ての地区にできていくことを望んでいます。
災害時、地区の力で最初の七十二時間を生き延びることが以前からの課題になっています。地区の実情に合わせた実践的な災害対策、在宅避難者支援対策を地域の住民との双方向の意見交換と当事者参加で実現していくことは、各まちづくりセンターの使命です。地域で顔の見える協力関係をつくり、避難行動要支援者個別支援計画を災害時に本当に役に立つものにしていくのも、あんしんすこやかセンターと社会福祉協議会を含むまちづくりセンター等の役割ではないでしょうか。新たな条例が、地域住民による、より充実した自治活動の推進につながることを求め、生活者ネットワークの賛成意見といたします。(拍手)