令和7年9月 定例会09月18日
初めに、千歳烏山駅南側地区のまちづくりについて伺います。
千歳烏山駅南側地区では、地権者を中心に、市街地再開発事業を活用したまちづくりの検討が進められています。今月初めには、都市計画素案に関する住民説明会が開催されました。しかし、地域住民の疑問や不安の声に対して納得のいく説明が尽くされたとは言い難く、また、二月にスタートしたちとからまちづくりフォーラムの議論と駅南側のまちづくりの検討がリンクしていないとの声も複数伺っています。
市街地再開発をめぐっては、資材価格の高騰や人手不足等の影響を受け、各地で計画見直しが相次いでおり、国も社会資本整備総合交付金の要件を見直すなど、昨今の状況を踏まえれば、このタイミングで出す都市計画案だからこそ、その決定に際して従来以上に丁寧な合意形成が必要ではないでしょうか。
そこで提案します。駅南側の再開発について、ちとからまちづくりフォーラムの取組と連動させる形で、誰もが参加できる対話と熟議の場を設けることができないか、区の見解を伺います。
また、仮に計画どおり事業が実施された場合、九年後に当該事業区域で約六百戸、千二百人程度の人口増が見込まれると聞きます。現在の烏山地域の人口が約十二万人なので、一%に相当する社会増です。人手不足の影響が年々深刻化する中、逼迫する保育や学校、介護、公共交通、防災等の社会基盤に対して追加的負荷となることは疑う余地がなく、影響はあらゆる分野に及ぶでしょう。
先月末に区内保育所と学童での虐待事案が相次いだように、現場の疲弊は既に顕在化しています。それなのに区がこれだけの将来的な人口増を安易に受容しようとする姿は、あまりに楽観的ではないでしょうか。当該都市計画事業がもたらし得る都市整備領域のみにとどまらない社会経済的影響の見通しとその対応について、現状の区の考えを伺います。
次に、これからの住宅政策について伺います。
東京都が先日公表した令和七年基準地価格によると、区部の住宅地の平均上昇率は八・三%、世田谷区も六・五%と、年々加速しています。地価上昇に伴い、二十三区内の住宅価格も押し上げられ、賃貸物件の家賃も上昇傾向です。千歳烏山駅南側の再開発で建設予定のタワーマンションは、三階から三十四階の高層棟は住宅としての利用が計画されていますが、かかる状況に鑑みれば、困窮層は到底入居不可能な住宅ストックが大量に供給される可能性が高く、それにより居住貧困を一層深刻化させるのではと懸念します。
区は現在、今後五年間の住宅政策の指針を示す第四次住宅整備後期方針の策定に向けた検討を進めています。しかしながら、方針素案では、こうした居住貧困や格差解消といった視点が希薄で、また、多様性の尊重の観点からも課題があると考えます。例えば、既に区内世帯の過半数を単身世帯が占めているにもかかわらず、約千六百戸ある公営住宅のうち単身向け住戸は三割にも満たず、若者や中高年単身世帯の住まいの安定化は今後研究、検討とされており、新規施策を含め、依然として区の住宅政策は家族世帯を中心に設計されているようです。
また、行政が作成する広報物はいずれも、いまだに異性愛カップルと子ども二人から成るいわゆる標準世帯の表象にあふれ、住まいに関連づけられるライフイベントも、就職、結婚、出産、住宅購入、子の就学、定年といった典型的なライフコースしか想定されていません。さらに、日本の住宅はこの標準世帯の核家族を前提としたLDK型が固定化しており、多様なライフスタイルに対応しにくい現状もあります。緩やかな共同生活を希望する複数人家族が集まって暮らしたいと思っても、それを受け止める間取りの住宅はほとんどありません。
当区でも標準世帯は全世帯の約九%にすぎないことを考えれば、ソフト、ハードともに従来型の家族支援からの転換が志向されるべきではないでしょうか。区が基本構想に掲げる多様性の尊重の理念や関連条例に照らし、住宅政策においても多様な家族の在り方や住まい方を念頭に置いた情報発信や施策展開を進めるべきと考えますが、見解を伺います。
最後に、国際理解教育の在り方について伺います。
先日の文教常任委員会で、今後の区立小・中学生国際理解教育のあり方(案)が報告されました。その内容は、ネーティブスピーカーとの会話練習を重視した英語教育、それと連動した国内外での体験活動の二本柱で構成されています。しかし、各地の戦争や虐殺、環境破壊、自分と異なる他者への嫌悪、憎悪の高まり、分断や格差の拡大など、平和や人権、民主主義が急速に後退している中、多文化共生をうたう条例を持つ区が打ち出すべき内容として適当なのかとの課題認識から、大きく三点質問します。
第一に、その目的についてです。国際理解教育の起源は、相互の無知や偏見などがさきの大戦につながったとの反省から、一九四七年にユネスコが提唱した概念に遡ります。二〇二三年には、国際理解教育に関する唯一のユネスコ勧告が約五十年ぶりに改定され、平和、人権、国際理解、協力、基本的自由、グローバル・シチズンシップ及び持続可能な開発のための教育に関する勧告として、日本を含む百九十四加盟国の全会一致で採択されました。勧告第五項には、教育は、人種主義、外国人排斥及び憎悪を扇動するあらゆる行動及び思想、あらゆる形態の不寛容、差別及び暴力の防止に関する諸活動に貢献すべきとあります。
翻って、日本の国際理解教育は、日本人の国際性を伸ばすグローバル人材育成のための教育として取り組まれてきた経緯があり、今回、区教委が提示したあり方(案)もその流れをくんでいます。しかし、私たちは、ユネスコが一九七四年勧告を今、改定し、平和と人権への貢献を強調した意味を考えるべきではないでしょうか。今求められているのは何よりも共に生きていくための教育であり、個人の能力開発の結果が差別や戦争、環境破壊に向けられることがあってはならないはずです。
そのためには、国際理解教育の大前提として、区の男女共同参画・多文化共生推進条例第八条が規定する基本的施策や、せたがやインクルーシブ教育ガイドラインが示す行動コンセプトに基づく、徹底した反差別と人権を基盤とした教育実践が重要と考えますが、ここで改めて、今取り組むべき国際理解教育の在り方に対する区教委の認識を問います。
第二に、具体的方策としての多文化理解の担保についてです。日本の国際理解教育は長く英語教育や異文化・欧米文化理解、交流に偏ってきましたが、今回提示されたあり方(案)も基本的に同じです。また、教育振興基本計画に基づく区の現行の教育体系を見ても、欧米圏以外の多様な人々との接点は限られ、経済、社会、文化的な視点でのESD教育や開発教育の側面も大変弱いように見受けられます。
これでは、欧米圏の文化に触れるだけでは分からない貧困や紛争などの問題、平和、人権の問題について考える機会が十分に確保されず、接点をなかなか持つことができない国や文化圏の人々への偏見、差別意識の解消にはつながらないのではと危惧します。文化の多様性や複数性を知り、地球規模の課題に対しても共生の視点で考える機会を担保すべく、国際理解教育に取り組む機関や団体等の外部資源の積極的活用も含め、具体的な取組内容を再考すべきと考えますが、見解を伺います。
第三に、具体的方策としての英語教育の在り方についてです。今年度より区立小中学校の全学年にALTが配置拡充され、来年度以降は外国語の学習において新たにオンライン英会話やAI英会話を導入予定とのことです。しかし、あり方(案)を見ると、区は、英語による実践的なコミュニケーション能力の育成を掲げながら、その本質を見誤っているように思えてなりません。
私は、区議になる前、開発コンサルタントとして国際協力の現場に携わっていました。新卒で初めて従事したプロジェクト国はタイで、ASEAN諸国の人々を相手に仕事をしましたが、そこで初めて、これまで勉強してきた英語だけではうまくコミュニケーションに対処できない経験をしました。その際必要だったのがリンガフランカとしての英語、ELFです。
私たちが通常学校で習う英語は、規範としてのアメリカ英語やイギリス英語であることがほとんどです。しかし、ELFは国際共通語としての英語の多様性を前提とし、目の前の相手とのコミュニケーションを成立させるために、会話に参加する全ての当事者の努力と調整を必要とします。ここでは、例えばネーティブの正しい発音や表現は一定の基準を与えても、必ずしもそれが正解とは限りません。時にネーティブな英語では間違いとされる表現や、互いの母語も駆使してコミュニケーションを取ることもあり得ます。教育を通じて強烈に刷り込まれるネーティブ信仰に対し、ELFは多様な英語間の優劣に疑問を投げかけ、さらに、教育者や学習者の立場を問わず、自らの英語を使って表現することに、より大きな自信を与えることも示唆されています。
区が推進する英語教育がそれ自体が目的ではなく国際理解のためのツールだとおっしゃるのであれば、重要なのはネーティブの英語を絶対視する技術面の訓練ではなく、コミュニケーションに臨む姿勢や対話の質ではないでしょうか。実際に、英語を第一言語とする人は世界人口のたった五%にすぎないことを考えれば、英語はノンネーティブ同士の対話で使用されることのほうが圧倒的に多いでしょう。こうした点も踏まえ、区の英語教育や体験活動においてもELFの視点を導入してはいかがか、区教委の見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
◎烏山総合支所長 私からは、千歳烏山駅前広場南側地区のまちづくりについて二点御答弁いたします。
これまでも区は、再開発準備組合と連携し、再開発事業の仕組みなど、区民の方にあまりなじみのない内容も含めて、駅前広場南側地区のまちづくりについて、報告会やオープンハウス等を通じ、情報提供や御意見を聞く機会を設けるよう努めてまいりました。
今後も引き続き、都市計画変更の手続と並行して、ちとからまちづくりフォーラムなどの取組において、再開発事業を活用したまちづくりについて情報共有や意見交換を行う場を設ける等、地域の皆様と対話を重ねながら取組を進めてまいります。
次に、社会経済的影響の見通しについてです。
当該事業による保育、教育、子育て支援等の社会基盤への影響については、事業区域周辺も含めた地域全体の将来人口の動向等も踏まえ、事業者や区の関係部署と連携、協議しながら対応していくことが重要であると認識しております。
区では、都市計画の素案説明会の中で、再開発事業に係る交通環境や、日陰、風などの周辺の環境への影響について、地域の方々へ説明いたしましたが、事業完了後の人口増加に伴う行政サービスや地域社会への影響、周辺の既存商店街への影響など、様々な分野について、区として事業計画の検討段階から協議していく必要があると考えております。
引き続き関係部署と連携しながら町の変化に対応してまいります。
以上です。
◎都市整備政策部長 私からは、住宅政策における多様な家族の在り方や住まい方についてお答えいたします。
改定中の住宅整備方針では、基本理念における住宅施策の視点の一つに多様性の視点を取り入れ、多様な存在を相互に認め合い、それぞれの居住ニーズやライフステージに応じた多様な住まい、暮らしの実現を掲げております。
一方で、現状の住宅の仕様は、議員お話しのように、一般的とされる家族モデルを標準に計画されているストックが多く、多様な家族の住まい方のニーズに十分に応えられていないと認識しております。性的マイノリティーの方や単身世帯、血縁に縛られず緩やかな共同生活などを希望される方々など、誰もが安心して住み続けられる暮らしの実現に向けて、関係所管や関係機関と連携し、多様な住まい方の実現を支援する効果的な情報発信や普及啓発などを進めて、施策の展開を検討してまいります。
以上です。
◎学校教育部長 私より、国際理解教育の在り方について三点御答弁いたします。
まず、国際理解教育の在り方に関する区教委の認識についてでございます。
今年の三月に策定いたしましたせたがやインクルーシブ教育ガイドラインは、区の多文化共生に関する条例や計画を踏まえて作成しており、相互理解と人権の尊重が当然のものとして受け止められる学校づくりを目指しております。世田谷区のインクルーシブ教育の理念や、国内外の現実の社会状況等も踏まえ、国際理解教育においては、日本や外国の文化を知るなど、従来の知識的な側面に重点を置いた取組に加え、児童生徒が多文化共生ということを自分事として捉え、考え、実践的行動に移すための語学力等の技能的な側面のみならず、人権感覚を育むことが必要だと考えており、このような視点を持って取組を進めてまいります。
次に、外部資源の積極的な活用も含め、多文化共生の観点から、具体的な取組内容の再考についてでございます。
教育委員会では、多文化共生の考え方に基づいた今後の国際理解教育の在り方として、技能的な側面であるコミュニケーションとしての英語教育と、実践的な取組としての体験活動の二つの要素で構成するものと考えております。
国内での体験活動については、まずは、区内在住のできる限り多様な国、地域の外国籍の方と交流することでお互いの理解を深める取組を行い、海外の体験活動につきましては、現地で日本と全く異なる文化、価値観を体験するとともに、世界から見た日本や日本人を知り、自分を振り返ることで、地球の一員としてどのように行動するべきかを考える取組を行うことで、単に言語の技能の向上だけでなく、多文化共生への行動につなげることができるよう施策を組み立てており、各施策を推進していく予定でございます。
最後に、ELFの視点の導入についてでございます。
今回、案としてお示しした取組は、文法の理解やリスニング力といったスキルの向上はもとより、世界中の様々な国や地域、文化、言語の人々とともに生きていくためのコミュニケーションの手段として、英語の習得を目指しております。
議員御指摘のELFの視点も踏まえ、発音や文法等に自信がなくても引け目を感じることなく、積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢の大切さについて、教師自身も理解を深め、世界中の人々が互いに理解し合うための共通言語としての英語教育を推進してまいります。
今後も、多様な国の人々との会話機会の創出から、共に目標を達成し、互いに理解し合うなどを体験し、児童生徒が多文化共生について当事者意識を持ち、それに向けて実践的な行動に移すことができるよう、実践的、体験的な英語教育の取組を進めてまいります。
私からは以上でございます。
◆一点再質問です。
先月二十三日に烏山の住民団体が主催した学習会では、これまで区が取り組んできた下北沢や明大前等でのまちづくりの事例を伺い、参加者からは、烏山の再開発に関しても対話の場を求める声が多数寄せられました。再開発事業のスキーム自体が揺らぎつつある中、今後、本事業に疑問や不安を抱える住民は増えていくと思いますので、ぜひ区にはこうした方々にも寄り添っていただき、参加と協働でこの問題に対しても力を尽くしていただきたいと思いますが、区長の見解を伺います。
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 おの議員の再質問にお答えをします。
千歳烏山駅前広場南側地区のまちづくりに関してでございます。
下北沢の北沢デザイン会議、あるいは明大前におけます街づくり学校については、それぞれ、小田急線上部跡地の利活用や、また、京王線の駅前広場等の在り方について、誰もが参加でき、情報を共有し、対話を行う場として設けたもので、立場や異なる意見の違いを超えて対話を重ねる積み上げによって参加と協働のまちづくりに取り組んできたものであります。
千歳烏山駅前広場南側地区で検討が進められている再開発事業は、再開発準備組合より進められている取組でございますが、地域貢献や環境の変化など、町全体への影響が大きいことから、再開発事業区域のみならず、周辺地域の皆さんに再開発事業を正確に理解していただいた上で、住民間の意見交換、対話を重ねていくことが重要であると考えており、所管に対してしっかりとした告知をして、対話の場を設定するよう指示してきたところでございます。
清水副区長の他会派への答弁にもありましたように、ちとからまちづくりフォーラムの取組の中で、再開発事業についての地域の皆様と情報交換をできる場を設けるなど、再開発事業に疑問や、あるいは不安を抱く地域住民の皆様にも御参加をいただき、参加と協働を基盤に、地域への思いを持つ幅広い人たちが魅力あるまちづくりを協働していけるように、その基盤を提供していきたいと考えております。
以上です。
