第4回定例会  一般質問と答弁 2022.11.29 田中みち子

令和4年12月 定例会-11月29日

田中みち子 議員 質問通告に従って、順次質問してまいります。

まず初めに、医療的ケアを含む重度障害者のグループホームについてです。

日本で初めて重症心身障害者医療的ケア対応の民設民営のシェアハウスが今年八月、区内にオープンしました。親亡き後も住み慣れた地域で安心して自立した生活を営みたい思いの当事者と御家族の願いが形になったものです。

区の障害者施設整備等に係る基本方針には、令和十二年度までに重度障害者約三百人分のグループホームを整備する必要があると示されています。親亡き後の住まいについては喫緊の課題であり、スピード感を持って取り組む必要があります。

区では重度障害者への施設整備を進めるために、土地建物所有者向けのチラシを作成し、民有地の活用を推進していこうとしていますが、新たな施設建設には一定の時間がかかることは言うまでもありません。

例えば空き室になっている集合住宅の幾つかの部屋をリフォームなどによりグループホームとして活用できれば、建設までの時間やコストが大幅に削減されますし、障害のある方と居住を共にすることで、障害理解の促進にもつながります。施設整備の要件などクリアにすることを条件に、一部空き室になっている集合住宅の障害者グループホーム整備への可能性について、区の見解を伺います。

また、福祉人材の確保も喫緊の課題です。障害者施設で働く職員に対しては、運営法人が借り上げた宿舎の家賃の一部を助成する制度がありますが、ほとんど知られていません。こうした情報の周知なども徹底し、福祉人材の確保と流出を防ぐ取組を進める必要があります。見解を伺います。

さらに、障害者グループホームは、障害支援区分四以上の重度の障害者に限り、個人が契約する外部のヘルパー派遣を受け入れることができる制度があります。しかし、この制度は令和五年度末までの経過措置となっています。

重度の障害のある方にとって、慣れ親しんだヘルパー派遣は必要不可欠です。区として国や東京都に対して、経過措置の柔軟な対応を含めた重度障害者の受入体制の確保を要望すべきと考えます。区の見解を伺います。

次に、希望する在宅療養、在宅医療、みとりの実現に向けた体制整備についてです。

コロナ以前に比べ、入院治療中の慢性疾患を抱える患者の在宅療養への移行が増えているようです。入院中の面会制限などにより、会いたいときに会うことさえできないことが理由の一つに挙げられていましたが、私もこうしたお声を多く聞いてきました。また、区内のホスピスが十分ではない中で、延命治療を選択せず、緩和ケアを中心にした在宅治療や、みとりを希望される方も増えています。

人生の最終段階における医療とケアについては、医療従事者から十分な情報提供と説明がなされた上で、患者本人の意思を尊重した最善の治療方針が取られるよう進めることが重要です。

令和三年第三回定例会の一般質問では、私自身が父親の在宅療養や治療、みとりを経験し、アドバンス・ケア・プランニングの必要性を実感したことから、ACPの実効性が担保されることを求めてきましたが、本年五月の区民意識調査の結果を見れば、八割以上がACPを知らないと答えており、効果的な取組が必要です。見解を伺います。

令和元年度の高齢者ニーズ調査では、人生の最後は自宅で迎えたいと答えた区民の割合は六割でしたが、令和三年、区内で亡くなった方の死亡場所は、自宅と老人ホーム合わせて約四割、年齢が上がるにつれ増加傾向です。

自宅でのみとりを経験したことがない世代では、在宅でのみとりに対する不安や戸惑いは当然ですし、家族としては、病院や施設に任せたくなることもあるでしょう。しかし、二〇三〇年には、終末期ケアが受けられないみとり難民が四十七万人に達するとも試算されています。

在宅でも、御本人の希望に沿った適切な医療や介護が受けられる体制整備を検討し、みとりの不安解消のための効果的な意識啓発についても検討する必要があります。見解を伺います。

最後に、虐待や困難を抱えた子どもへの支援についてです。

子ども食堂は、地域の子どもたちの第三の居場所であり、虐待のおそれや困難を抱える子どもたちのセーフティーネットとして大変重要な役割を担っています。令和二年第四回定例会では、地域における子ども食堂の役割を明確に位置づけ、地域支援の一つであることを明らかにする必要性を訴え、子ども食堂の要保護児童支援協議会への参画を求めてきました。

ようやく、来月十二月二日に砧地域では、子ども食堂の運営団体も参加する形で、要保護児童支援砧地域協議会が開催されることになったことは評価します。

コロナ禍では、家庭内DVなどによる面前DVなどの虐待も顕在化し、困難な家庭も増えている現状があり、早期発見、早期対応が必要です。

適切な問題解決に向けては、関係機関等が共通の視点を持って連携し対応していくことが重要なことからも、できるだけ速やかに全地域への参画に向けても取り組むことを求めます。見解を伺います。

一方、虐待などの理由により保護された子どもが家庭に戻った後、保護者に代わり、週末など短期間に子どもを宿泊させるなど、心のサポートも含めた寄り添い支援をしている方を存じ上げております。

区が実施する短期間子どもを預かる事業では、登録済みの里親とファミリーサポート事業の援助会員だけの周知にとどまります。

世田谷区では家庭養育の推進に向け、新しい社会的養育ビジョンで示された委託率――就学前の子どもについては七五%以上、学童期以降は五〇%以上と、高い目標を掲げています。

協力家庭ショートステイ事業の協力家庭の募集要件を検討し、支援者を支える研修体制の充実とともに、現在二三・八%の里親委託率の向上に取り組む必要があります。見解を伺います。

また、今年度実施した区内の小学校四年生から六年生、中学校全生徒へのヤングケアラーに関する実態調査からは、中学校で七・七%、高校生世代では四・九%が家族のお世話を担っていると回答していますが、小学校では国より多い一七・七%の結果です。ヤングケアラーの説明を行わず調査をしたことが影響しているとはいえ、子ども食堂には、精神疾患のある親の感情面のサポートや兄弟のお世話、家事も担う、いわゆるヤングケアラーもいますが、十分な支援が届いているとは言い難い現状です。

各学校では、小学校五年生と中学校二年生を対象に、スクールカウンセラーが全員面接を実施していますが、この面接では、ヤングケアラーとして支援が必要との相談は特に上がっていないとのことでした。現状の実施体制では、困難を抱える子どもが確実に支援につながることができるとは思えません。

これまで求めてきた教員などへのヤングケアラーの気づきのための研修はしっかり行っていただきたいのですけれども、それと同時に、このヤングケアラー連盟がつくったこの図解なのですけれども、これをぜひ使って、全員面接を再度行っていただきたいと思います。

ヤングケアラーは、こんな子どもたちですということで、家族にケアを要する人がいる場合、大人が担うようなケア、責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている十八歳未満の子どもを言いますということで、この感情面のサポートを行っているという子どもが大変多いと私は感じていまして、見逃されているのではないかと思っております。ぜひ全員、丁寧なヒアリングを実施していただきたいと思います。これは求めます。

そして、子どもたちが相談しやすい環境づくりとともに、周囲の大人が家庭内に困難を抱えた子どもに気づいたり、相談を受けたりした際に、心のケアも含めた支援に確実につなぐことができる体制づくりが必要です。旗振り役を担う子ども・若者部として今後どのように取り組むのか伺います。

さらに、丁寧なヒアリングから新たにつながったヤングケアラーの支援に当たっては、子どもの配食事業や養育支援等ホームヘルパー訪問事業の利用が想定されます。既存の枠組みにとらわれず、一人一人に寄り添える体制づくりの再構築を求め、以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

〔中村副区長登壇〕

◎副区長 重度障害者のグループホームについて三点御答弁いたします。

まず、集合住宅の空き室を活用した整備についてです。

集合住宅の空き室を活用した障害者グループホームの整備は、今年度新たに開設したグループホーム六件のうち四件であり、いずれも単身者向け集合住宅の空き室を活用した中軽度者向けのグループホームです。

一方、重度障害者向けのグループホームの整備は、バリアフリーなどのハード面の制限のほか、常時見守りや支援を必要とする入居者の支援体制を整える必要もあることから、単身者向け集合住宅の空き室を活用した整備は難しいと考えております。

しかし、おおむね四人以上の居室と居間などの共有スペースが確保できる間取りの集合住宅であれば、建築要件や設備基準などを満たした上で、東京都の許可を受ける必要はありますが、重度障害者向けのグループホームを開設することは可能であると考えます。

集合住宅の空き室を活用した重度障害者向けグループホームの整備については、区内でグループホームを運営している事業者に聞き取りを行いながら、区としても研究を進めてまいります。あわせて、不動産活用のチラシをホームページや土地建物所有者向けのセミナーなどで周知を図り、民有地での重度障害者向けグループホームの整備を促進してまいります。

次に、宿舎借上げ支援についてです。

区では、区内で活躍できる福祉人材の発掘・育成の支援のために、知的障害者の移動支援や高次脳機能障害者ガイドヘルパーの研修を行うとともに、世田谷区福祉人材育成・研修センターにおいて、福祉や介護職場の働き方を紹介する講座や、事業所の担当者と直接お話ができる相談面接会などを開催し、福祉の仕事への就職をサポートするなど、様々な手段により福祉人材の確保に努めているところです。

お話の宿舎借上げ経費の助成につきましては、障害福祉サービスを提供する民間の事業者に対し、東京都福祉保健財団が実施をしております。今年度より対象が福祉避難所だけでなく、そうした要件のない事業所にも拡大をされています。

当該事業は、募集期間が令和六年度までの予定のため、事業者に対して時期を逸することなく周知するとともに、今後も東京都及び他自治体の実例や事業者からの聞き取りなどにより、福祉人材の確保に有効な手法の情報収集に努めてまいります。

次に、重度障害者の受入体制についてです。

障害者グループホームは、原則、専属の従事者により介護サービスを提供しなければならないと、国の基準に定められています。しかし、重度障害者への支援は、より多くの職員を配置する必要があることなどから、特例として介護サービス包括型と、日中サービス支援型のグループホームにおいては、個人単位での外部ヘルパーの利用が令和五年度末までの経過措置として認められております。

重度障害者の受入体制の強化については適宜改定が行われるなど、国においても課題と捉えられており、区としても、今年度から新たに重度障害者の受入れをしたグループホームに対して独自に補助をする制度を創設したところです。

現時点においては、経過措置の再延長は不透明でありますが、区としても経過措置や、その他報酬の見直しなど、今後の国の動向を注視しつつ、重度障害者が安定して受け入れられる体制を整えるよう、国や東京都に対して要望をしてまいります。

以上です。

◎保健福祉政策部長 私からは、在宅療養関連二点御答弁いたします。

昨年三月、在宅療養・ACPガイドブックを発行し、あんしんすこやかセンターから区民や医療、介護関係者等に広く配布するほか、各地区で区民向け講座を開催するなど、在宅療養とACPの周知啓発を進めてきました。

本年五月に実施した区民意識調査では、在宅医療は七割半ばが知っている一方で、ACPは知らないと回答した方が八割を超え、人生の最終段階に関する話合いについても、話し合ったことがあると答えた方は三割であり、ACPへの理解の促進について課題があると認識しております。

このような状況を踏まえ、あんしんすこやかセンターにおける取組に加え、ガイドブックを有効に活用してもらえるよう、区では医療・介護事業者向けの講習会を開催するほか、来年一月と二月には、新たに区民向けの講習会やシンポジウム形式の講演会を実施するなど、引き続き在宅療養及びACPのさらなる周知啓発に努めてまいります。

次に、在宅でのみとりについてです。

令和三年に亡くなられた方の死亡場所は、全国と比較すると、自宅や老人ホームで亡くなられた方の割合が高いものの、本人の御希望とは乖離しております。

この背景としては、在宅医療の認知度が十分ではないことや、在宅での介護が難しい現状があることなどが挙げられます。

また、在宅医療を望む高齢者が適切な医療や介護を受けるためには、病院から在宅への円滑な移行など、医療と介護が連携していくことが大変重要であると捉えております。

区では引き続き、医療、介護など多職種が参画する医療連携推進協議会で意見交換を進めるとともに、医療・介護関係者の情報共有の支援などの検討をしてまいります。

また、人生の最終段階の医療やケアにおける本人の意思決定の重要性や、在宅でのみとりに関する意識啓発についても努めてまいります。

私からは以上です。

◎子ども・若者部長 私からは、虐待のおそれや困難を抱える子どもの支援体制について四点御答弁申し上げます。

まず、子ども食堂の要保護児童支援協議会への参加についてです。

要保護児童支援協議会は、虐待を受けている子どもをはじめとする要保護児童について、関係機関がその子どもなどに関する情報や考え方を共有し、適切な連携の下で対応していくため設置しているネットワークでございます。

協議会への参画については、個別のケースにおいて区と関係機関が連携して対応する必要が生じた際に、都度参画いただくことを原則としておりますが、予防的な観点から、必要に応じてあらかじめ協議会へ参画いただき、連携体制を構築していくことも効果的であると認識しており、議員お話にございました今回の砧地域における取組も、このような考え方に基づいたものでございます。

子ども食堂は、子どもへの食の支援にとどまらず、地域に開かれたコミュニティーの場として、子どもの見守りや支援を必要とする家庭を把握しやすい立場にあることから、子ども食堂が協議会に参画いただくことで、支援が必要な子どもや家庭の早期発見、早期対応を図る上で有効であると考えてございます。

引き続き、おのおのの子ども食堂の運営方針や状況等も踏まえつつ、協議会の設置趣旨や機能、役割などを丁寧に説明し、御理解いただきながら、ほかの地域においても協議会への参画を進めてまいります。

次に、子どものショートステイ事業に協力家庭をもう少し募集していくべきではないかということについて御答弁申し上げます。

子どものショートステイ事業は、保護者の疾病ですとか疲労、その他、身体上もしくは精神上、環境上の理由により、家庭において一時的に子どもの養育が困難となった場合、児童養護施設等で養育を実施するといった虐待予防の取組でございますが、以前より、利用希望が重なり、希望どおりの利用ができないことや、実施施設が遠方で利用しにくいといった地域があることなどが課題でございました。

そのため、新たな取組といたしまして、施設のほか、一般家庭で子どもの預かりを行っていただく協力家庭ショートステイ事業を進めているところでございます。協力家庭の募集につきましては、当初、里親として登録している方を対象としてございましたが、世田谷区ファミリー・サポート・センター事業の援助会員にも募集範囲を広げ、現在、合わせまして五家庭に登録いただいているところでございます。

預かりを実施する際は、利用希望家庭と協力家庭の両者が安心安全に当事業を利用できるよう、利用家庭の状況や希望を把握した上で、対応可能な協力家庭を選定させていただき、ショートステイ利用前には利用希望家庭と協力家庭との面談を設定するなど、丁寧に進めていく必要がございます。

こうしたことから、委託に至った実績はまだありませんが、今後の実施状況を踏まえながら、募集対象のさらなる拡大も含め、当事業が子どもと家庭にとってより利用しやすい事業となるよう検討してまいります。

次に、ヤングケアラーの心のケアを含めた相談支援の窓口について御答弁を申し上げます。

ヤングケアラーである子どもは、自分の生まれ育った環境が当たり前と思い、自分が担う家庭内役割がほかと異なることに気づきにくいといったことがございます。本人や家族に自覚がない状態では、自分から相談し、支援を求めることは難しいため、周囲の大人が気づき、子どもの心に寄り添って丁寧に話を聞き、本人の意思を尊重した支援が必要でございます。

また、現在行っている学校や福祉サービス関係者などへのヒアリング調査では、子どもとの信頼関係が十分にできていないと、子どもからの相談に結びつきづらいといったことが挙げられてございます。

これらのことから、周囲の大人が日頃から子どもとコミュニケーションを取りつつ、気づきの感度を上げまして、子どもが相談しやすい環境をつくることが重要でございます。

そのために、令和五年度には支援マニュアルを作成し、相談を受けた大人が必要な支援に円滑につなげるため、関係所管や連携先が分かるようにするとともに、周囲の大人へ、ヤングケアラーの正しい理解についてさらなる普及啓発を進めてまいります。

次に、ヤングケアラーの支援に当たって、今後増えてきたときの対応について御答弁を申し上げます。

各地域の子ども家庭支援センターにおいては、虐待のみならず、何らかの理由で子どもの養育に困難を抱える家庭の支援にも当たってございますが、ヤングケアラーについても、必要に応じて面接や家庭訪問などにより状況を把握し、子どもの配食事業ですとか、養育支援等ホームヘルパー訪問事業といったものを活用した支援を行ってございます。

それぞれに要件や利用回数等の定めがございますが、今後ヤングケアラーの相談が増えていった場合、併せて支援ニーズの把握にも努め、支援を必要とする子どもと家庭が適切な支援を受けることができるよう、事業の在り方についても検討をしてまいります。

以上でございます。

◎教育総合センター担当参事 私からは、子どもの支援体制の御質問のうち、学校で実施している全員面接に係る対応についてお答えいたします。

各学校では、毎年度、小学校五年生と中学校二年生を対象に、スクールカウンセラーによる全員面接を実施しております。こうした全員面接のほか、日々児童生徒から寄せられる相談において、支援を必要とする課題等があった際には、教員等と情報共有の上、学校としての支援について検討を行うとともに、福祉的な支援が必要な場合には、スクールソーシャルワーカーを活用し、福祉関係機関等へのつなぎを行っているところでございます。

一方で、ヤングケアラーに係る相談につきましては、子ども自身が支援の必要性を十分に理解していないこともあることから、必要な支援につながりにくいという課題もあると捉えています。

今後、全員面接等の相談の際にヤングケアラーのリーフレット等を活用した情報提供を促すなど、相談のしやすい環境の構築に取り組むとともに、適切に支援につなげられるよう、研修の実施等を通じて教員やスクールカウンセラーの支援の質の向上も図ってまいります。

以上でございます。

田中みち子 議員 今、答弁いただきましたスクールカウンセラーによる全員面接をできるだけ速やかに行っていただきたいと思います。今現に子どもの遊ぶ権利とか、学ぶ権利とか、そういった子どもの権利の保障がされていない、そういう環境にない子どもというのがいまして、それで支援につながっていないのですね。ですから、そこは要になると思いますので、できるだけ速やかに実施いただくよう要望します。